(※写真はイメージです/PIXTA)

社葬とは、会社が運営主体となって故人を偲び、追悼する儀式です。社葬の開催にあたっては会場費や祭壇費等さまざまな費用がかかりますが、そうした費用は経費として認められるのでしょうか? また、費用相場はどの程度なのでしょうか? 本記事では、株式会社ハウスボートクラブの代表取締役社長・赤羽真聡氏が社葬に関するお金について解説します。※本記事における「社葬」とは、亡くなった方の火葬を終えたあとに後日改めて会を設ける場合を想定しています。

社葬が「経費」と認められる条件

社葬の費用が税務上損金処理されるためには、ある一定の基準があります。社葬の損金処理について、法人税法基本通達において、以下のように規定されています。

 

『法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする』

(法基通9-7-10)

 

ここにある「社会通念上相当」の判断ですが、「社葬をなぜ行うのか?」という点に立ち戻って考えるとよいでしょう。社葬の3つの役割のうち、「社外への広報」という側面において、社葬は会社にとって必要な儀式と判断され、その費用性が認められます。

 

社葬の対象となる故人

通達には、社葬の経費負担について「役員又は使用人が死亡した場合」とありますが、会社の使用人すべてが対象になるのでしょうか? 一般的には、社葬の対象となる故人は、以下のいずれかのケースになります。

 

1.経営・企業の発展に貢献した人

会社の創業者、会長、社長など経営トップや取締役など経営の中枢で社業に功労のあった方が在職中または退職後に亡くなった場合

 

2.業務中の事故などの殉職者

役員でなくとも、業務中の事故でなくなった社員や、社業に功労のあった社員が現役で亡くなり、取締役会の決議により認められた場合

 

社葬を行う対象者については、あらかじめ「社葬取扱規程」を作成し、基本方針を決めておくとよいでしょう。

 

取締役会の議事録

社葬の執行が決まったら、臨時取締役会を開催し、「社葬取扱規程」に従い、基本方針を決定していきます。社葬費用を経費として計上するためには、臨時取締役会の議事録を作成しておくことが非常に重要になります。

 

 

社葬にかかる費用

一般的には社葬を執り行う式場や規模によって費用が変わるため、事前に概算予算を出すのは難しいと言われています。

 

当社のお別れ会サービス「Story」でも、内容にあわせて300万円~1,000万円などさまざまな事例がございます。ここでは、これまでの実績から一般的な費用の例をお伝えします。

 

■費用例

450万円(参列者500名程度、都内ホテルでのお別れ会を想定)

 

■内訳

会場・料理費用 150万円

祭壇費 150万円

会場装飾費(ムービー作成費含む) 100万円

運営費(当日スタッフ含) 50万円

 

※上記はあくまでも目安であり、Storyではご予算に合わせて会場のご提案からお手伝いさせていただきます。

 

 

企業の経費から負担する場合の注意点

社葬の費用を企業の経費から負担する場合、客観的な書類を残すことが重要です。準備にかかった費用はすべて領収書をとっておき、内訳を控えておきましょう。領収書を入手しにくいものも、明細を控えておきます。そのほか、会葬者リストなども記録を残し、後日確認を求められたときに説明できるようにしておきましょう。

 

香典収入

本来、香典は、遺族に対する弔慰として、故人に供えられるものですので、遺族が受け取ることが一般的です。その際、香典返しのかけ紙の送り主の名前は故人の名字になります。社葬の場合、香典を辞退するケースも少なくありません。もし、会社が香典を受け取る場合は、法人税法上、収入として計上し課税対象となります。

 

遺族が負担すべき費用を法人が支払った場合

社葬やお別れ会の場合、かかった費用は会社の負担となりますが、合同葬の場合は、これらの費用を遺族と按分します。その割合に決まりはなく、社葬の規模や内容に応じて、会社と遺族で決めることになります。また、お墓や仏壇、戒名、法要の飲食費など損金処理が認められていない費用は遺族の負担となるため、法人が支払った場合は立替払いとなります。

 

遺族にとっては、葬祭費用は今後の相続税や遺産協議などにも影響するため、気になることがある場合は、相続に詳しい税理士に相談してみましょう。

 

 

社葬費用の勘定科目と損金処理

勘定科目

社葬費用は原則的に税務上、「福利厚生費」として損金処理できます。ただし、ホテルやレストランでのお別れ会で、儀礼を伴わず会食が中心であれば「接待交際費」と判断され、損金処理できない場合もありますので、注意が必要です。

 

損金処理できるもの

税務上、以下の費用は損金処理が認められています。

 

・葬儀、お別れ会基本料金

・式場使用料

・バス、ハイヤー料金

・お布施

・案内状作成費、案内状郵送費

・社葬の前後に生じた出費(新聞広告・会葬礼状の費用など)

・お手伝いの人の食事代

・写真、ビデオ撮影料

・そのほかの費用(社葬の警備スタッフの日当など)

 

損金処理できないもの

以下の費用は損金処理が認められておらず、基本的には遺族の負担となります。

 

・戒名料

・法事費用(飲食代など)

・棺代、骨壺代

・火葬料

・仏壇

・墓地、墓石の購入費用

・遺族の香典返し

・死亡診断書費用

 

まとめ

社葬の費用は、その規模と内容にもよりますが、平均で300万円~1,000万円ほどのコストがかかります。会社が主催し、費用を負担することになるため、会社の経費として処理ができますが、そのためにはルールと条件があります。

 

また、社葬の費用を考えるうえで1番大切なことは、社葬の目的や意義を考え、予算を効果的に使うところと節約するところのメリハリをつけることです。

 

どのような社葬にしたいのか? その目的を考えると金銭面だけで内容を決められるものではありませんので、社葬を行ったあとの企業の未来を考えながら、丁寧に企画を進めていくことが大切です。