自社のホームページを作成しても、業者に管理運営を一任している会社がほとんどではないでしょうか。ホームページの立ち上げや、運営開始時に専門業者の力を借りるメリットは大きいですが、延々と「他社任せ」の状態にしていては、せっかくのホームページを本業のビジネスに有効活用することはできません。株式会社コウズ代表取締役の浜野耕一氏が専門家の目線で解説します。

ホームページを高いレベルで企業戦略に落とし込むため

ホームページは、サイトを制作して公開しただけでは成果を得ることはできません。継続的な改善なくしては、ホームページを見に来る人が求める情報を提供できず、成果につながりません。改善するには、Webマーケティングの考え方や実際にホームページの更新をするためのWebの知識を持つ必要があります。

 

そのためホームページを運営するには、初期の段階では制作会社の力を借りるのが最良の選択です。制作会社はその企業の事業に特化したホームページ戦略を策定することはできませんが、さまざまな業界の企業ホームページの戦略を担う中で得たノウハウを持っています。制作会社に任せれば、精度の高い運用ができます。その反面、制作会社は多くの企業を支援しています。リソースにも限りがあるため、1社の戦略を深く追求してくことは難しくなります。

 

制作会社の支援を受けることへのメリットとデメリットを考えると、制作会社のノウハウを土台として、制作会社と一緒にホームページを運用しながら自社にノウハウを蓄積していくことが大切です。そして少しずつ自社でできることを増やしていき、その先は自社でホームページの更新や変更も含めて自社で運営できるようになるのが理想です。「専門知識を持つ社員もいないから、そんなことはできない」と考える経営者も多いかもしれません。

 

しかし実際に私が支援する企業で、自社の人材だけで運営するようになった実例もあります。現時点で自社にノウハウがなくても、改善を続けていくことで将来的に自走することは可能なのです。

完全自社運営を目指すためにも制作会社の選択は重要

注意したいのは、依頼する制作会社を適切に選択する必要があるということです。制作会社によって提供できるものには差があります。ホームページの制作をメインにする企業では、企業から更新の依頼を受けたら作業をするという受け身な運用になるケースがほとんどです。その点が企業側にとって「ホームページの運用で困っているのに、何もアドバイスをくれない」という不満を持つ原因になることがよくあります。

 

なぜそのようなことになるかというと、2つのケースがあります。ひとつは戦略やKPIの達成に向けて具体的な計画を立てて施策を作るプロセスを制作会社の中で持っていない場合です。もうひとつは、「提案しても売上に結び付かない」と制作会社が考えている場合です。

 

例えば「ホームページがこのような状況になっているので、こうした改善をしたらよいのではないか」という提案をして改善作業をする際は作業工数がかかりますが、それを企業側が支払ってくれないことが多いからです。企業側としては、ホームページの制作には予算を確保していても、改善に予算を割り振っていないケースが多く、費用を捻出することができません。

 

ホームページは、公開してからが勝負です。いかに回数多く改善を積み重ねてきたかで、蓄積するノウハウの量も違ってきます。改善のためのコストは必要だという認識が薄いという企業側の問題があります。

 

更新の予算は企業によって差がありますが、私が多くの企業を支援してきた経験から年に100万円程度は必要だと考えています。私はいつも経営者に「事業基盤となるホームページも人材育成と同じと考えてください」とお話しています。社員を雇用する際も、年額何百万円というお金を投入し、何年もの時間をかけて育てています。それよりも少額で運営していくことも可能ですが、経営基盤にふさわしい品質が維持できません。

 

反対に300万円かければよいのかというと、投資の回収が難しくなります。中小企業であれば、ホームページの制作費として100万円、運営費用を年額100万円が成果が出る金額の目安です。営業担当者の3分の1程度の予算と考えます。

 

ホームページは事業の基盤になりえるもので、社内のリソースを活用する価値のあるものです。ゆくゆくは社内で人材を育てていくというビジョンを持って制作会社を選択してください。

 

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※令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成