(※画像はイメージです/PIXTA)

歴史的な住宅不足に陥っているアメリカですが、徐々に解消の兆しが見えてきたといいます。直近の不動産市場についてみていきましょう。

売り出し中の物件数は6月単月で19%増加

アメリカの深刻な住宅不足に解消の兆しが見えてきました。

 

アメリカではパンデミックによる売り控え(供給減)と引っ越し増加(需要増)、ウッドショック(供給減)、人手不足(供給減)、低金利(需要増)が重なったことで歴史的な住宅不足に陥っていました。

 

しかし、6月にはいって住宅の在庫数は急上昇。Realtor.comで販売中の物件数は前年比19%増となりました。同メディアは5年前から在庫数データを収集しはじめましたが、この増加速度は史上最速とのことです。6月単月で見ても、新規売り出し数がコロナ禍以前の水準を上回り、1年前から4.5%増加しています。ただし、在庫数は、まだコロナ禍以前の水準の約半分です。

 

また、在庫の増減ペースには都市ごとに大きな差があるようです。特に増加率の高いオースティンでは1年前から在庫数が145%近く増加、続くフェニックスは113%、ローリーは112%近く増加しています。一方、マイアミでは在庫数は16%減少し、バージニアビーチは14%、シカゴは13%それぞれ減少しています。

 

Realtor.comのチーフエコノミストであるダニエルヘイル氏によると、「7月には、6月を通じて見られる改善の加速に基づいて、追加の在庫増加が見込まれる」とのことで、住宅不足は今後さらに解消されていくと期待されています。

物件価格は依然として高水準

需要と供給のバランスが改善されつつあるなか、物件価格はまだ下がっていません。

 

Realtor.comによると、6月の上場価格の中央値は450,000ドルに達し、過去最高を記録しました。この背景には、手頃な価格の物件の供給は依然として少なく、相対的に高額物件の取引シェアが増えていることが挙げられます。

 

不動産データプロバイダーであるATTOMのレポートによると、第2四半期に平均価格の住宅を所有するための毎月の支払い額は、米国の平均賃金の31.5%。前年の24%から大幅に増加しており、増加率は過去20年以上のなかで最大です。アメリカの一般的な金融機関が住宅ローンを承認するための債務対所得比率の上限は28%と言われています。そのため、平均的な収入の人が平均的な物件を買おうとすると、住宅ローンが組めないのです。

 

つまり、庶民にとっては住宅が買いづらい状況がまだまだ続いています。潜在的な住宅購入希望者が購入を諦めているケースも相当数あると見られ、不動産業界は手頃な物件の在庫を増やすことが求められています。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。