近年の日本では人口減少が進み、賃貸オーナーからは「先行きが不安」の声が挙がり始めてきた。そこで注目したいのが、シニア層を対象とした賃貸住宅経営である。本連載では、シニア向けの賃貸住宅経営の可能性について、すでに15年以上前から元気なシニア向けに特化した賃貸住宅のパイオニア、旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長の依田悦夫氏と営業開発室長の岩並健太郎氏に話を伺う。第2回は、高齢者向け賃貸住宅経営の懸念点と、その懸念を払拭する同社の取組みについて見ていこう。

シニア向け賃貸住宅に求められる、不測の事態への備え

65歳以上の人口割合が全体の21%以上を占める超高齢社会へ突入してから、10年以上の歳月が経過している日本。20年後の2040年には、首都・東京でも4人に1人が65歳以上となる見通しだ。同時に懸念されるのは少子化に伴う人口減だが、東京や大阪などの大都市では人口集中が続き、2020年を基準に2040年まで微増していくという(国立社会保障・人口問題研究所の予測)。

 

これはつまり、高齢者世帯の占める割合だけが急増していくとも考えられる。さらに配偶者に先立たれるなどして、ひとりで生活を続ける高齢者の数は、ますます増えていきそうだ。これからの賃貸経営は、こうした社会事情を意識しながら進めていく必要に迫られている。

 

 

旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進課長 岩並健太郎氏
旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業開発室長 岩並健太郎氏

岩並氏「旭化成ホームズは、高齢者が生活しやすい空間設計を重視した元気なシニア向けの賃貸住宅『へーベルVillage』事業を2004年からスタートさせました。子どもたちの独立に伴い、広くて管理が大変な持ち家からより生活しやすい環境へ移動していただくというイメージです」

 

こうした前提を理解はしていても「元気なシニア向けの賃貸住宅を新たに作る」というアイディアに対し、前向きな姿勢を持てないオーナーは多い。そこにはシニア向け賃貸経営、特有の事情がある。まず「孤独死」。その不安を旭化成ホームズの『へーベルVillage』は払拭してくれる。

 

依田氏「『へーベルVillage』には、各戸に『見守りセンサー』が設置されています。具体的には12時間、室内トイレの利用がないとセンサーが発動し、24時間365日対応の警備スタッフが確認へ訪れるというシステムが確立されているのです。このため万が一、孤独死などが発生した場合でも、室内に与える損傷などの影響を最小限に抑えられるでしょう。

 

それ以外にも、業務提携を結んだ介護事業者から社会福祉士などの相談員が月1回派遣され、各世帯を訪問しています。体調はもちろん、生活の不安やお困りごとの解消、そして介護福祉に関する疑問点などを、じっくりと相談いただけるのです。また医療機関とも連携しており、インフルエンザ予防注射などの健康イベントを随時開催しています」

 

自活可能なアクティブシニアを襲う不測の事態に対し、しっかりとした対策が用意されている。『へーベルVillage』が提供するこうしたサービスは、誕生から10年の時間をかけ、じっくりと確立されていったものだ。

 

[図表1]『ヘーベルVillage』の見守り体制

 

 

さらに賃貸経営業界では珍しく、『へーベルVillage』の賃貸管理・サブリースは、他社やグループ会社に任せず、自社で担当している。

 

岩並氏「私たちは『元気なシニア向け賃貸住宅の経営が従来と同じではいけない』という強い使命感をもち、経営開始後のアフターフォローこそ重要であると考えています。だからこそ自社による一括借り上げで、入居者やオーナーの反応をダイレクトに感じ取ることが非常に大切でした。『へーベルVillage』の誕生から15年以上が経過していますが、特にはじめの10年はノウハウを培うにあたり、大きな意義を持つ期間だったと感じています」

 

 

シニア向け賃貸住宅…どうしても初期投資は高くなる

シニア向け賃貸住宅の経営に関しては、まだ懸念事項がある。バリアフリーなど高齢者向けの設計を重視すると、初期費用が高額になることだ。

 

旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長 依田悦夫氏
旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長 依田悦夫氏

依田氏「一般的な賃貸住宅と比べ、坪単価が20万~30万円程度高くなるのは事実です。しかし付帯設備が充実していれば、エリア内の相場よりも10~15%高く家賃を設定することができます。それでも想定利回りでは、ほかの投資手法と比較すると見劣りするでしょう。しかしこれからの時代に長期・安定経営を目指すのであれば、シニア向け賃貸住宅は注目に値するはずです。

 

また入居者の立場で考えれば、仕度金だけで数千万円の出費となる、有料老人ホームに比べ、『へーベルVillage』は一般の賃貸住宅に入居する感覚と変わりません。コスト面においても、入居者メリットは大きいはずです」

 

賃貸経営においての不安は様々だが、『へーベルVillage』の経営においてオーナーの強い味方になってくれるのが、旭化成ホームズ独自のサブリース「30年一括借上げシステム」。入居者の募集や対応から建物管理まで、手間のかかる業務一切をすべて行ってくれるから、空室リスクや家賃滞納リスクへの不安は解消される。

 

一方で、サブリース契約で心配されるのが賃料下落リスクだ。通常のサブリースでは、5年間の家賃保証、以降は2年ごとに家賃の見直しが行なわれることが多い。しかし「30年一括借上げシステム」では、まず「10年間の賃料固定」を約束。さらに今後、マーケットが拡大していくことを考えると、賃料下落リスクは非常に低いと考えらえる。

 

依田氏「通常の賃貸住宅経営を考えていた方が『へーベルVillage』を知り、興味を持つケースが多くなっています。また同じエリア内で複数棟の経営を行っているオーナーは、『自分の物件同士が競合してしまう』というリスクを感じています。そのようななかで他物件とは一線を画す『へーベルVillage』を選ぶケースが増えています」

 

シニアに特化した賃貸住宅に関し、業界内でも他の追従を許さない実績を持つ旭化成ホームズは、超高齢社会における長期安定経営の頼もしいパートナーとなってくれるだろう。

 

次回は『へーベルVillage』の特徴や魅力について、さらに深掘りしていく。

 

 

取材・文/西本不律 撮影/杉能信介(人物)