マンションには「管理組合」という自治組織があり、投資用マンションのオーナーも、自動的に管理組合の一員になります。今回は、その管理組合の役割と実際の業務の解説とともに、投資家としての管理組合との付き合い方を解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

管理組合の組織体制と業務内容

マンションは、多くの人が暮らす共同住宅です。そこで、「建物の区分所有等に関する法律」では、共同住宅であるマンションを住民が自主的に管理するため、住民による自治組織として管理組合の設立を義務づけています(e-Gov、「建物の区分所有等に関する法律」参照)。

 

管理組合は、区分所有者(住戸のオーナー)全員で構成される組織です。運営の目的は、マンションの敷地、建物、および付属設備に対する管理を住人が共同して行うことであり、法律上は、居住者に限らず、すべての区分所有者が組合員として加入するものとされています。つまり、投資用マンションを買えば、不動産投資家も自動的にマンション管理組合に参加することになります(区分所有法第3条)。

 

管理組合の業務は、

 

①共用部分の日常清掃業務

②エレベーターや浄化水槽などの設備の保守点検

③修繕工事の実施・手配

④大規模修繕工事計画の立案

⑤管理組合の運営

 

など多岐にわたり、国土交通省が定めている「マンション標準管理規約」だけでも17項目に及びます。

 

これを住人だけで管理するには限界があるので、実際には管理業務を管理会社に委託するケースが増えています。国土交通省による「平成30年度マンション総合調査」によれば、管理業務のすべてを管理業者に委託している割合は74.1%、管理業務のすべてを管理組合で行っている割合は、6.8%となっており、大多数が業者に依頼している実態があります(国土交通省「平成30年度マンション総合調査)。

日々の管理業務の意思決定は理事会で行うのが一般的

区分所有法34条では、「管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない」と定められています。ここでいう「管理者」とは、いわゆる管理組合理事長のことで、この集会は「総会(組合総会)」とも呼ばれます。総会は組合の最高意志決定機関であり、管理規約(マンション居住・共有部分の使用などに関するルール)の変更、理事の選出などは、この総会で決められます。また、各組合員の管理費の費用負担比率なども総会で決められます。

 

総会は、全員参加が原則ですが、実際には興味がない、あるいは仕事が忙しいなどの理由で参加しない人も多くいます。そして議決権行使書を提出するか、すべて理事長に任せるという場合には、白紙委任状を提出します。

 

また、日常の細かい組合業務についての意志決定はいちいち総会に諮らず、理事長や理事で構成される理事会を作り、日々の管理業務についての意思決定は理事会で行うことが一般的です。

管理会社への管理を委託するメリット・デメリット

多くの管理組合が専門の管理会社に業務委託しています。受託業者は、不動産やビルメンテナンスの専門業者で、日常的な設備管理から将来の大規模修繕まで、すべてを計画的に管理してくれます。また、その際の管理費用等の管理も委託することができるので、管理者は業者にすべて任せることができます。管理組合の理事とはいっても、会社員などの本業がある人の場合、管理業務に時間や手間がかけられず、また専門知識もないことが多いため、業務委託のメリットは大きいといえます。

 

一方、デメリットとしては、業務委託による委託費用の発生が挙げられるでしょう。

 

なお、管理組合から委託されて建物管理を行う管理会社と、オーナーが入居者管理(家賃管理やクレーム処理など)を委託する賃貸管理会社は別のものなので、混同しないようにしてください(実際には両方の役割を同じ会社が兼任していることもありますが、契約は別です)。

管理費の使途と平均的な管理費額は?

組合が行う管理にかかる費用は、区分所有者が管理組合に支払う管理費から賄われます。国土交通省が指針を定めた「マンション標準管理規約」には、管理費の内訳が11項目にわたって書かれていますが、中でも次の3つの費用が大きな比重を占めます。

 

①共用部分の維持管理費用

電気代・水道代、エレベーターの保守・点検費用、共用部にかける火災保険等の保険料、廊下などの照明器具の交換・修理、清掃員の人件費など。

 

②管理会社に支払う費用

管理会社に委託する場合の業務費、管理員が管理会社から派遣されている場合の管理員の人件費など。

 

③管理組合の運営費

管理組合理事会で必要な資料購入・印刷費、コミュニティ形成のための行事費用など。

 

管理費の相場は、立地やマンションの戸数によっても変わってきますが、前出の「平成30年度マンション総合調査」によると、1戸当たりの管理費の全国平均は月額10,862円です。マンションの規模が小さくなるほど、管理費は高くなる傾向があります。いずれにしても、これはマンション投資に関する必要経費となりますので、忘れずにチェックしたいところです。

投資用マンションオーナーこそ「積極的な関与」を

極端な例ですが、もし自分がそのマンションに住み、後々売却する気もないのなら、管理状態が悪くても気にならなければいい、という考え方もあるかもしれません。

 

しかし、投資用マンションのオーナーにとって、管理費の多寡は「収益(利回り)」に直接影響します。また、管理内容(普段の清掃や大規模修繕など)は、間接的に空室率にも影響し、将来の売却の際、査定にも響いてきます。

 

そう考えると、投資用マンションのオーナーだからこそ管理にも気を配るべきなのです。ところが実際には、管理組合に積極に関わろうとする投資用マンションのオーナーはごく少数です。

 

管理組合がしっかりと機能し、管理会社がきちんと仕事をして高い品質の管理状態を保っているのなら構いませんが、往々にしてそうはなりません。

 

なぜなら、オーナーの管理組合への関心が低いと、管理組合の活動は低調になります。管理組合活動が低調になると、管理会社のなかには「どうせ管理組合は何もいわないから」と高をくくり、管理業務を手抜きするところもあります。

 

そんな状態が続けば、大切なマンションの資産価値を脅かす事態にもなりかねません。住民がマンションの共有部分に私物を置くなど好き勝手に使ったり、エレベーターなどの重要な設備の故障を放置したり、外壁や床を著しく汚損したりすれば、建物全体の価値が下がってしまいます。もちろん、防災上も好ましくありません。

管理組合に対するチェックポイント

管理組合には、管理会社の管理費用・修繕費用の額が管理内容と比較して適切かどうかをチェックする役割もあります。投資家はコストの部分をコントロール下に置くべきなので、できるだけ総会には主体的に出席し、場合によっては理事を経験してみるくらいの姿勢が、投資に対するリターンを高めるのではないかと思われます。

 

とりあえず、年に1度送られてくる管理組合総会の書類(総会の議案書)を確認することは必須です。総会の議案書は開催日の約1~2週間前にオーナーの自宅に届きます。議案書が送られてきた際には、次の7つのチェック項目を参考に議案を確認し、健全な建物管理が実行されているかをチェックする必要があります。

 

1.管理費会計・修繕積立金会計それぞれに収支表や賃貸貸借表があるか

2.銀行口座の残高証明書は添付されているか

3.監査報告書に監事の署名捺印はあるか

4.赤字決算になった際には原因が報告されているか

5.組合のお金の管理について、通帳と印鑑が別々に管理されているか

6.管理費・修繕積立金の滞納状況(未収金)は報告されているか

7.現在の修繕積立金の残高などを考慮して修繕計画が立てられていることが、きちんと説明されているか

 

もし不備があったら、理事に問い合わせたり、総会に出席してその場で質問したりするなどして、確認しましょう。

 

また、もしこれまでに行われていない場合は、複数の管理会社から見積りを取ることを組合総会で提案してもいいでしょう。他の管理会社が価格の低い見積りを提出してきた場合、リプレイス(管理会社を変えること)する選択肢もあります。当たり前の話ですが、管理会社は、管理費を削減されることを非常に嫌がります。しかし、それ以上にリプレイスを嫌がるので、管理費を下げざるを得ません。見積りを取ることは多少手間がかかりますが、管理費はぐっと下がる可能性があります。

まとめ

マンション経営で長期的・安定的な家賃収入を得るには、自分の手でマンションの資産価値を守っていくという意識が大切です。そして、管理組合への積極的な関与はその一助となります。ぜひ、建物管理にも関心を向け、資産価値を守っていきましょう。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。