かつて外貨預金は資産分散・資産形成の選択肢として魅力的な存在でした。しかし、現在は以前ほどの魅力はありません。では、外貨を対象とした運用手法、FXはどうでしょうか。本記事はその実態を解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

かつて「外貨預金」は魅力的な運用対象だったが…

かつての外貨預金には、国際通貨分散によるリスクヘッジだけでなく、効率よい運用対象としての魅力もありました。日本では30年も超低金利時代が続いており、安全資産である定期預金や債券で資産を大きく増やすことは不可能ですが、その点、海外には高金利の通貨があり、外貨定期預金や安全性の高い外国債券を保有しておくだけで、ある程度高い利回りが得られたためです。

 

しかし、ここ最近は米ドルはじめ、かつては「高金利通貨」として人気が高かった豪ドル(オーストラリアドル)やNZドル(ニュージーランドドル)などもすっかり金利が下がってしまい、積極的に増やすための運用対象という点では魅力が薄れています。

 

現在、高金利通貨といえば、トルコリラや南アフリカランドなどの新興国通貨が挙げられますが、これら新興国通貨の金利の高さはインフレの進行や政治・経済面などさまざまなカントリーリスクと表裏一体であり、為替変動リスクが非常に高くなっています。

 

たとえば、円/トルコリラの長期のレート見ると、1リラは2014年には50円ほどだったのが、一貫して下がり続け、現在20円を切っています。5年で60%も価値が減ってしまったのです。もし5年前に100万円分のトルコリラを買っていたら、現在は40万円以下の価値しかないということです。仮に、その間、年利回り10%の金利が得られていたとしても、為替レートの減価をまったくカバーできません。

為替レートの変動を利用して利ざやを稼ぐ「FX」

海外通貨を対象とした代表的な運用手法には、外貨預金や外国債券のほかに「FX」があります。FXでは「スワップポイント」(金利差調整分)と呼ばれる、2国間の金利差から得られる利益を得ることもできますが、スワップポイント狙いの投資は、上記のような理由で現在では難しくなっています。

 

現在FX投資を行っている人の多くは、為替レートの変動を利用した売買差益狙いの取引をしています。

 

念のために確認しておくと、為替レートとは、1ドル=100円などのように表示される2通貨の交換比率のことです。この為替レートは、国際的な為替市場での取引状況(需給状況)を反映して、常に変動しています。たとえばドル/円の為替レートが1ドル=100円のとき、1ドルを買い、1ドル105円になったら1ドルを売れば、5円の儲けになります。

 

このように、価格変動による利ざやを狙うことがFX取引の主な目的であり、それ自体は非常にシンプルです。

FX取引の特徴…「証拠金取引」とは?

FX取引を特徴付ける仕組みのひとつが「証拠金取引」です。証拠金取引とは、取引に必要な資金の一部を「証拠金」として差し入れ、その数倍分の取引ができる仕組みです。何倍の取引ができるのかを「レバレッジ」といい、現在では最大25倍のレバレッジが可能です。つまり、実際に取引する金額の25分の1(4%)の資金だけを入金すればよく、資金の運用効率が高まる反面、リスクも高くなります。以下で、簡単に概要を説明しましょう。

 

たとえば1ドル=100円のときに、1万ドルを買うとします。銀行のドル預金など、レバレッジがかけられない場合は、当然100万円が必要です。そして、後日1ドル105円(1万ドル=105万円)になったときにドルを売れば、5万円の儲けで、利益率は5%です(手数料・税などは考慮せず。以下すべて同じ)。

 

一方、FXで25倍のレバレッジをかけられるとすれば、1万ドルを買うのに必要な証拠金は、100万円の25分の1=4万円です。そして、後日1ドル105円(1万ドル=105万円)になったときにドルを売れば、5万円の儲けです。つまり、4万円の投資に対して、5万円の儲けですから、投資額に対しては125%の利益率です。

 

逆に、1ドル=96円になったとすると、レバレッジをかけないドル預金の場合は、100万円が96万円へ減るだけですが、FXの場合4万円はゼロになり、損失率100%です。
このように、高いレバレッジをかけることにより、投資額(=証拠金)に対する損益の幅が大きくなる=リスクが高くなる、というのがFXの特徴です。

 

なお、実際のFX取引では、預けてある証拠金がある程度減った時点で、追加の証拠金を求められたり、強制決済されて取引ができなったりするなどの仕組みが設けられており、証拠金がいきなりゼロになるようなことはほぼありません(例外的にそういうケースもありますが、ここでは説明を省略します)。

FXは、1日のうちに売買を完結する人が半数以上

FXはレバレッジをかけた取引が可能であるため、たとえばドル/円でいえば、1ドルに対して5銭(0.05円)~10銭(0.1円)といったわずかな値動きでも利益獲得のチャンスがあります。そこから、多くのFX投資家は、数秒から数分、長くても数時間という時間単位で売買をする「デイトレード」を行っています。

 

それを示すデータとして、『外為白書2018-19』(外為どっとコム総研)によれば、投資頻度は、「デイトレード(1日複数回)=41.3%」「1日に1回程度=13.9%」となっており、1日のうちで売買を完結する人が半数以上を占めています。ここから、過半数の人は、長期的な資産形成ではなく、短期の利ざやを求めるギャンブル感覚でFXを行っていると推測されます。

「利益は少なく、損失は多額」がFXの実態

また、同書によると、2018年の1年間においてFXで利益を得た人は41.8%、損失となった人は46.3%、変化無しが11.9%となっています。これだけだと、利益を得た人と損失となった人の割合は意外と拮抗しているように見えます。

 

しかし、それぞれの利益率・損失率の詳細を見ると、利益を得た人のなかで、もっとも多いのは1~5%の利益率(全体の13.2%)であり、次が5~10%の利益率(同9.8%)と利益率は比較的低いものとなっています。

 

それに対して、損失となった人のうちもっとも多いのは、マイナス30%以上の損失(同16.1%)となっており、「利益は少なく、損失は多額」という、FX投資の実態が見て取れます。

 

株式投資や、不動産投資は「投資」です。投資とは、対象が将来にわたって生み出すと予測される収益(キャッシュ)を現在の価値に割り引いて、その価値が投資額と比べて高いか安いかを判断し、安いと思ったら買うことだといえます。

 

たとえば株式投資なら、企業が今後生み出すと予測される利益、不動産投資なら、物件から得られると予測される家賃などと、その株式や物件の価格とを比較して、価格の方が安いと判断できたら投資する、ということです。

 

為替レートは、長期的には2国間の経済状況の差を反映して決まるとされています。したがって、数年~10年以上の単位での経済の動きを考えて外国通貨を購入・保有するであればそれは投資に近いといえるかもしれません。

 

しかし、デイトレードや数日の値動きからの売買差益を狙うFX取引は、投資ではなく「投機」「ギャンブル」であり、株式投資や不動産投資とは本質的に性格が異なるとものだと考えるべきでしょう。もちろん、世の中にはギャンブル、たとえば競馬で生活している人もいます。しかし、競馬好きならだれもが競馬で生活できるかと聞かれれば、答えはNOでしょう。同様に、FXのような投機によって大きな資産を築くには、たぐいまれな才能や運が必要であり、投資で資産を築くことに比べて、はるかに難しいと考えなければなりません。

 

FXは外貨預金より取引手数料が格段に安く、また証拠金取引によるレバレッジ効果もあるため、急速に普及しました。しかし、為替の動きを利用した短期間の利ざや狙いの取引は、本質的にはギャンブルのようなものであり、そこから長期簡にわたって利益を上げ続けることは、一部の特殊な才能を持つ人以外にはほぼ無理だと考えられます。もしFXで取引を行う場合は、これらをしっかりと認識しておくことが大切です。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。