インターネットで複数の投資家から出資を募り、企業や事業への投融資で得た収益を還元する「投資型クラウドファンディング」。預貯金よりも利回りが高く、株式よりも手堅い、とされる金融商品であり、投資家からの注目を集めている。そんななか、保証会社による債務保証によって元本割れのリスクを大きく低減させた、驚きの「クラウドファンディング商品」を発売(第1号案件は募集終了)したのが、SAMURAI証券株式会社である。本連載では、同社・代表取締役社長の澤田聖陽氏と、取締役の久保広晃氏に、その最新事情について伺った。注目を集めている第2号案件についても言及する。第2回のテーマは、貸付型クラウドファンディングの魅力である。

市場参加の選択肢が大きく広がる個人投資家

「貸付型クラウドファンディング」の具体的な商品スキームは以下のとおりだ。

 

まず、SAMURAI証券がインターネットを通じて不特定多数の投資家から資金を集め、それをグループの貸金業者であるSAMURAI ASSET FINANCE 株式会社(営業者)に受け渡す。SAMURAI ASSET FINANCEは、受け取った資金を個人や法人などに貸し付け、銀行が提供するローンなどと同じように、貸付先から元本と利息の返済を受ける。最終的には、その元本・利息が投資家に分配されるという仕組みだ。

 

「不動産取得や事業向けの融資には、まとまった資金が必要なので、個人が単独で貸すのは困難です。しかし、クラウドファンディングの仕組みを使えば、少額ずつ資金を集めることができ、まとまった融資が可能となります。これまで、銀行など金融機関しか参加できなかった魅力的な市場に、個人投資家の方々も参加できるチャンスが広がったわけです」と久保氏は語る。

 

融資する案件の内容はさまざまだ。個人が不動産を取得するための資金を借りるケースもあれば、民泊経営や介護ビジネスなどの事業資金を集めることもある。

 

なかには、「健康食品会社の事業向けに融資を行い、元本・利息の還元とともに、その会社の商品をノベルティとして投資家の方々に配った事例もあります。株式投資では株主優待制度が人気ですが、同じように投資家の方々に喜んでいただけるアイデアを盛り込んでいきたいと考えています」と久保氏は説明する。

「貸付型クラウドファンディング」のリスクとは?

ところで、いかにできる限り元本保全を目指すとはいっても、「貸付型クラウドファンディング」はあくまで金融商品の一種である。預貯金よりも高いリターンが得られるということは、相応のリスクもあることを考慮しておきたい。

 

第一のリスクは、貸付先がデフォルトに陥って債権が回収できなくなることだ。これについては、貸金業ライセンスを持つ営業者(SAMURAI証券の「貸付型クラウドファンディング」の場合は、SAMURAI ASEET FINANCE)がいかに厳格な与信審査を行っているかどうかが、リスクを抑えるためのポイントとなる。

 

「当社の場合、営業者であるSAMURAI ASEET FINANCEのほか、販売を担当するSAMURAI証券、親会社であるSAMURAI & J PARTNERSの3社が、貸付内容(貸付金額や貸付先等)に応じて二重、三重の厳格な審査を行っています。とくに親会社のSAMURAI & J PARTNERSは、投資銀行業務における豊富な経験を持ち、上場企業としての厳格な審査体制を備えているので、かなりの確度でデフォルトリスクを低減できると自負しています」と澤田氏は語る。

 

もうひとつ気を付けたいのは、「投資型クラウドファンディング」を提供する事業者そのものの信用リスクである。実際、2018年にはクラウドファンディング事業者による不祥事や支払いの遅延発生などが相次ぎ、投資家が被害を受けるケースもあった。

 

その点、SAMURAI証券は、「投資型クラウドファンディング」の組成に必要な第二種金融商品取引業のライセンスだけでなく、証券会社の営業に必要な第一種金融商品取引業のライセンスも当然ながら保有している。

 

澤田氏は、「第二種金融商品取引業者と比べて、第一種金融商品取引業者には、より高い財務健全性と事業運営が求められています。証券会社としての信用力を支えに、お客さまに安心して投資していただける環境を提供しています」と強調する。

 

また、「貸付型クラウドファンディング」については最近、金融商品としての安心感を高める大きな出来事があった。2019年3月18日、金融庁が「貸付型クラウドファンディング」の貸付先に対する匿名化の解除容認に結び付く公式見解を公表したのだ。

 

不特定多数の投資家から資金を集める「貸付型クラウドファンディング」は、いわば、クラウドファンディングという仕組みを通じて、一般の個人が誰かにお金を貸す、という仕組みである。間接的とはいえ、貸金業ライセンスを持たない個人(投資家)が資金を貸し付けることになり、貸付先を明らかにしたうえで投資家を募ってしまうと、貸金業法違反に当たるのではないかと考えられてきた。そのため、クラウドファンディング事業者は、自主規制的に貸付先を匿名としてきたが、その結果、投資家は「素性のわからない貸付先」にお金を貸すというリスクを抱えることになってしまっていたのだ。

 

今回の公式見解によって、個人情報保護法に基づき匿名が必須となる個人以外の貸付先については、匿名を解除できる道が開けた。

 

澤田氏は「SAMURAI証券では今後、個人以外の貸付先については原則的に匿名を解除することで、投資家の皆さまに安心して投資していただけるようにしていきます」と語る。具体的にどのような見せ方になるのか、この点にも注目だ。

 

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取材・文/渡辺賢一
※本インタビューは、2019年5月24日に収録したものです。