6人の専門家が手がけた「相続対策本」・・・執筆の動機とは?⑤

前回に引き続き、6人の専門家が集結し、1冊の本を書き上げた事例を紹介します。著者それぞれがどのような想いを込めて執筆したのか、インタビュー形式で探ります。第5回目は事業承継コンサルタントの幾島光子氏です。※本連載では、毎回ひとつの事例をあげ、今なぜ社長作家が激増しているのか、そして、本を出すことでどんなドラマが生まれるのかを探っていきます。

「後継者不足に悩む中小企業の役に立ちたい」

相続増税時代に突入し、相続税対象者は昭和33年以来過去最大に。相続人同士の争い、高額な相続税負担、財産の損失など、残された者の人生を揺るがす可能性があるゆえに、頭を悩ませる人も多い。

 

そんな中「かけがえのない財産や人間関係を守り、円満相続を叶える一助となりたい」という想いを抱き、司法書士・不動産鑑定士・税理士・不動産コンサルタント・遺品整理士・事業承継コンサルタントの専門家が立ち上がった。そして、「対策の難しい相続に悩む人」のために「正しい知識」を伝える本を出版した。

 

著者陣へのインタビュー記事、第5回目は事業承継コンサルタント・幾島光子氏。中小企業の事業承継に特化した人材紹介サービス業の草分けとして、常に「全体最適」を考え、独自の手法でコンサルティングを実施。本質を押さえた親身なアドバイスでさまざまなケースを解決に導き、多くのクライアントから信頼を集める。

 

幾島光子(事業承継コンサルタント)

 

 

会計コンサルタント、IT戦略コンサルタントを経て、大手人材紹介会社に転職。エグゼクティブクラスの採用を担当し、のちに流通・小売専門の人材紹介会社においてエグゼクティブ部門の立ち上げに参画。年間400名の転職希望者との面談を実施した。その後、日本で始めて中小企業の事業承継に関わる後継者紹介サービスを始める。

趣味は登山。今年9年ぶりのリベンジで富士山を初登頂。現在、社内で登山部をつくろうと企画中。

 

――本書を執筆されたきっかけは何ですか?

 

起業して7年が経ち、事例がたまってきました。小冊子にするか、本を書くかを検討していたところに、今回の発起人の佐藤様よりお声がけいただきました。

 

弊社の場合は、専門家でもテクニックがあるわけではなく、事例の積み重ねがノウハウになる型の業態です。事例集を作成し、世の中に広げることができれば、後継者がいなくて悩んでいる中小企業経営者のお役に立てるのではという思いがありました。

 

――近年、中小企業経営者の後継者不足が深刻さを増しています。2016年の帝国データバンクの調査によれば、中小企業の約8割に後継者がいないことが明らかになりました。

 

同族企業の多い我が国では、事業承継は家族の問題と捉えている経営者が多いようですが、実際は、国の経済に大きく影響する「社会問題」です。まだまだ経営環境が厳しく、赤字企業が全体の7割といわれています。

 

売上の増加や資金調達が第一優先の経営事項であると思いますが、事業承継への対策も優先順位を上げて取り組んでほしいと思います。

 

――事業承継の方法は、具体的にはどのようなものがありますか。

 

「人に引き継ぐ(親族内承継/親族外承継)」「株式公開」「会社の売却(M&A)」「廃業」の4種類があります。弊社では、中小企業に要職をご紹介するときに、採用決定権者(経営者)のお考えに加え、他の取締役や関係者の方からご意見をうかがう「legato®プログラム」を行なっています。

 

このプログラムの目的は、新しく人を採用する際に、できるだけ社内のコンセンサスを得ることで、その人が入社した効果を最大限に発揮させることです。

 

新たに登用された方の入社後の立ち上がりの速さが、その後の業績に大きく影響することは言うまでもありません。どんな方を登用すべきか、登用したいかということを、あらかじめ社内の関係者全員に深くインタビューして合意形成し、それにマッチする方を選ぶことができれば、期待する効果が十分に得られるでしょう。

 

――「legato®プログラム」、すばらしいですね。ただインタビュー時には高度なヒアリング力が必要だと感じます。

 

同族企業の事業承継は、ビジネスと家族の両局面での話が絡み合って進んでいきます。しかし、その両方の課題を解決しないと、事業承継の方向性が決まりません。とことん聴くに徹します。

 

私自身、よくしゃべる方で、聞いてほしいタイプの人間なので、訓練をして「傾聴」をしています。ただ、話し好きだからこそ、その重要性がわかるという立ち位置にもいます。長いインタビューの中、関係者の中に共通の「キーワード」を見つけられると課題解決が早いのですが……その「キーワード」を見つかれた時、一番の遣り甲斐を感じます。

 

 

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

 

弊社の場合は、相続でなく事業承継のコンサルです。相続と事業承継の違いは、色々ありますが、家族だけか、家族と他人が絡むかの差があると思います。もちろん家族だけで経営しているところもあると思いますが、血がつながっていない方を1人でも雇用していたら、家族だけの問題にしてはいけません。

 

かつてサポートが遅れた企業様で、最終的に事業承継ができず、会社を廃業した企業があります。その時に、20人以上の雇用者が一夜にして「生活保護者」になりました。そう考えると事業承継は、家族より大きく「地域経済」の問題なのです。

 

その存在の大きさを理解して、とにかく早く事業承継対策を初めて欲しいと思います。

 

 

佐藤良久、近藤俊之、幾島光子、石川宗徳、森田努、島根猛 著

『円満相続を叶える正しい知識』

 

 

「相続登記と遺言を行なうメリットってなんだろう?」
「相続した不動産、売るべき?売らないべき?」
「信頼できる税理士の見極め方を知りたい」
「不動産価格を巡って意見が分かれてしまった」
「倉から掛け軸を発見。誰に相談すればいい?」
「会社を任せられる後継者がいない」

「対策が難しい相続」に悩む人は、決して少なくありません。本書では、司法書士・不動産コンサルタント・税理士・不動産鑑定士・遺品整理士・事業承継コンサルタントの6名が、事例と共に相続に関する悩み解説。大切な資産と人間関係の守り方を教えます。

 

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連載いま激増する「社長作家」――その実像を探る

幻冬舎ルネッサンス新社 代表取締役社長

企画編集室・室長を経て現職。代表取締役となった現在も、毎月10冊以上の書籍編集に携わる。手がけるジャンルはノウハウ書、旅行記、写真集、絵本など幅広いが、特に得意としているのは小説と自叙伝。著者の出版目的を満たすことを重要視し、書き手と細かく議論を重ねる編集スタイルが特徴。これまで多数の重版実績を持つ。

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