(※写真はイメージです/PIXTA)
消えていた500万円
Aさんは休みを延長して、お盆明けに母親を病院に連れていくことに。母親の暮らしを支えているのは、自身の基礎年金と、亡き父の遺族年金です。合わせて月15万円ほどの収入で、田舎での一人暮らしには十分でも、今後の医療費や万が一、施設に入居する場合の費用を考えると、決して安泰ではありません。
いざというときのために父が遺してくれた貯蓄がいくら残っているのか、把握しておかねば……。そう思い、保険証を探そうと貴重品がまとめて入っているタンスの引き出しを探していると、預金通帳が目に留まります。Aさんが通帳を開いてみると、500万円という大きな金額が引き出されてしまっていました。
驚いて母親を問いただすと、返ってきたのは「だってお巡りさんが来て、お前を釈放するためにお金が必要だっていって……」という答え。――典型的な詐欺の手口。急速に体中の血液が冷えていくのを感じます。Aさんにとって、人生で初めて生きた心地がしないと感じた瞬間でした。
警官をかたる詐欺の増加
特殊詐欺の認知件数と被害額は右肩上がりで増加。なお、被害の高額化も問題で、500万円超の被害額は812.3億円と、全体の被害額の93.3%を占めていることがわかっています。
また、Aさんの母親が騙されたように、警察官を語り逮捕名目等で現金を騙し取る特殊詐欺も増加しています。警察官を名乗って電話をかけてきたり、SNSに誘導したりして金銭をだまし取る、といった手口があります。
さらに、注意すべきは高齢者だけではありません。若年層であっても騙される人がいるようで、ビデオ通話で警察手帳や逮捕状をみせるなどしてインターネットバンキングで送金させる、といった手口もあるようです。警察はビデオ通話やSNSを使ってのやりとりはしませんので注意しましょう。
加えて、最近はインターネットバンキングを利用した振り込みが増えており、全体の6割を超えている状況です。

