VRゴーグルで仮想現実へ。映像に意識を集中させるサービス
最後に紹介するのは、「テクノロジーによる、痛み・不安の軽減」という理念をもとに2021年に設立されたxCura(エクスキュラ)が開発したVR(仮想現実)サービスです。
さまざまな診療科目でVRの試験導入を行なっていた同社は、2022年12月から「TherapeiaVR」の本格展開をスタート。TherapeiaVRは、VRゴーグルを装着しながら治療することで治療治験をエンターテイメントに変えるというサービスで、歯科治療、胃カメラの検査、心臓手術など、診療科目問わずあらゆる場面での使用が可能だとしています。
同サービスは、治療中にVRゴーグルを装着することで、意識をVR映像に集中させ、落ち着いて楽しく治療を受けられるというもの。具体的には、宇宙や海、森の中などのVR映像を見ることによって、意識を映像に集中させたり、VR映像で呼吸の長さやタイミングをガイドしたりすることができる仕組みです。
欧米での先行研究では、VRが痛みや不安の軽減に効果があることや、治療中に使用することで麻酔の量が減少したなどの報告もあるといい、減薬効果が期待されているのだそう。歯科治療や胃カメラ検査などを、つい痛みの恐怖から避けてしまいがちな人にとっては注目したいサービスといえそうです。
可能な限り細い針で痛点に接触する確率を下げる注射針、皮下に埋め込むカテーテル、さらには治療中にゴーグルでVRの世界に没入するサービス……治療には、症状によっては少なからず「痛み」がつきもののケースが多々ありますが、現在は今回紹介したような、できるだけ痛みを軽減することの可能なさまざまな製品、サービスが存在しています。そしておそらく、医療やテクノロジーが生活を豊かに、人を幸せにするものである以上、“痛み”を克服するための取り組みはこれからも続々と生まれることでしょう。治療のハードルを下げる「痛くないテック」は医療関係者のみならず、これからも注目を集めそうです。
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<プロフィール>
カワハタユウタロウ
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。