「年金だけで暮らす」が夢物語になった日本社会
国税庁の調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は「年収443万円」。ボーナスなどを含めない場合、年収443万円だと毎月の給与は36万円、手取りは28万円ほどになります。子どもを抱える世帯などに貯蓄が難しいことは容易にうかがえる金額です。
老後は年金暮らしで……と考えたいところですが、厚生労働省『令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者は3,588万人で、受給者平均年金は月額約14万5,665円。「年金+α」での生活が求められていることは間違いないでしょう。
ただ、老後不安といっても、数十年先のことなんてわからない……といった声も聞こえてくるもの。
そこで厚生労働省『家計調査年報(家計収支編)2021年』を見てみると、高齢夫婦無職世帯の家計収支の平均は、実収入が23万6,576円。うち21万6,519円が年金を主とした社会保障給付です。
一方の支出は、消費支出が22万4,436円、非消費支出(税金や社会保険料など原則として世帯の自由にならない支出)が3万664円で、トータル25万5,100円になっています。
現状の高齢者世帯ですら、月に約4万円の赤字に陥っている現実があります。それならば貯蓄を切り崩して生活するほかありませんが、日本人の貯蓄事情はどのようなものなのでしょうか。
厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査の概況』によると、全世帯では、「貯蓄がある」と返答したのは81.9%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,077万4,000円です。高齢者世帯では、「貯蓄がある」と返答したのは80.1%で、「1世帯当たり平均貯蓄額」は1,213万2,000円となっています。