(※写真はイメージです/PIXTA)

児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、多摩川下流域における洪水災害についてみていきます。

多摩川周辺の地帯、居住禁止とすべき?

また多摩川に注ぐ中小河川についても、合流部付近では、多摩川本流の水位が上がり、多摩川に流入させることができなくなったり、逆流があったりして洪水が発生した。いわゆる内水氾濫である。

 

さらにそれらの中小河川は、その上流の土地開発が進み、田畑が住宅地になるなど自然の貯水機能が弱まり流量の変化が大きくなった。

 

またもともと複雑に屈曲していたこともあり、多摩川本流の合流地帯だけでなく、途中でも地形の関係で洪水を繰り返すところも多くなった。

 

これらに対して早めに本流に流出させるためのバイパス(放水路)を造ったりしたが、いずれも本流の水位が上がってしまうとそれも機能しなくなる。そのようなときは、流出口に設置した水門(ゲート)を閉じ、ポンプで排水する。

 

今回は水門を閉めるタイミングを誤る人為的ミスがあったとも言われているが、それ以前にそれの容量も越えていた。

 

特に首都圏では、人口増加とともにかつては人が住まないようなところにも人が生活するようになったが、そうでなかったところでも、その後地下水の汲み上げなどでいつの間にか地盤沈下が進んだというところも多い。

 

これらの地域が50年とか100年に一度の豪雨によって冠水したのである。

 

次に起きたときのために、さらなる堤防強化や排水能力の増強が必要になるが、それにかけるコストなどを考えると、そのような場所を居住禁止とし、今そこに住む人たちを移住させる方が良い。

 

ただしどの地域を居住禁止とするかについては十分な調査及び研究の上で決定する必要がある。仮にある地区を移住対象とし跡地を遊水地にした場合、他の危険地帯も大幅に危険が減る可能性がある。

 

新たな遊水地に流れ込むことによって河川全体の水位が下がるからだ。だから河川全体を見て、どの地域を遊水地化したら最も効果的かについてシミュレーションなどを重ねて選定すべきである。

 

移住先については、多摩川周辺で言えば、川崎市や横浜市の丘陵上にも空き家が多くなってきている。多摩ニュータウンも同様である。

 

 

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児井 正臣

1968年3月 慶応義塾大学商学部を卒業(ゼミは交通経済学)。

1968年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。

1991年12月 一般旅行業務取扱主任者主任補の資格を取得。

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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