(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年12月に政府が発表した「令和5年度税制改正大綱」において、これまで相続税の「節税」対策として活用されてきた年110万円の「暦年贈与」の「生前贈与加算」が7年へと延長されることになりました。他方で、「相続時精算課税制度」に年110万円の基礎控除が導入されるなど、生前贈与による相続税対策が大きく変容することが想定されます。今後の見通しについて解説します。

その他の生前贈与の税制優遇について

なお、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」において問題視された生前贈与の税制優遇には、以下のような制度があります。

 

・教育資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・住宅資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・結婚・子育て資金贈与(1人あたり最大1,000万円)

 

いずれも、「教育資金」「住宅購入」「結婚・子育て」といった一定の目的のため、子・孫にまとまった額を一括贈与した場合に贈与税が非課税となるものです。

 

上限金額が大きいため、主に富裕層によって、実質的な相続税の節税対策として、活用されてきたものです。

 

期限付きの制度として始まりましたが、更新が繰り返され、存続してきたものです。

 

これらのうち、「教育資金贈与」と「結婚・子育て資金贈与」は2023年3月31日に期限を迎えますが、令和5年度税制改正大綱において、継続が決定されました。

 

ただし、相続税対策としての活用は実質的に大きく封じられることになります。

 

すなわち、これまでは贈与を受けた側で「所定の期間内に使い切れなかった額」については非課税であったり、あるいは「特例税率」とよばれる低い税率が適用されたりしていました。

 

しかし、2023年4月以降は、使い切れなかった額については課税対象となり、しかも、ペナルティとして、通常の親族間の贈与より高い税率が適用されることになります。

 

すなわち、制度が予定する本来の目的のために活用する場合に限って贈与税の非課税の特典を与え、相続税対策としての活用に制限を加えるということです。

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。

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