(※写真はイメージです/PIXTA)

消費税収(一般会計分)は、増税前の2013年度に比べて11兆円以上も増えました。しかし、家計消費は6.4兆円以上も減ってしまっています。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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安倍暗殺で日本の脱デフレは遠のいた

■続く脱デフレの戦い

 

2020年8月28日、安倍晋三氏は首相辞任を発表しました。その後の安倍氏は、財政主導による脱デフレに邁進していきます。2021年11月に発足した「自民党財政政策検討本部」や2022年2月発足した自民党若手議員による「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の最高顧問として、党内世論を積極財政へと誘導していきます。積極財政を推進する議員連盟の会合には、私も講師として呼ばれて話しました。

 

そうした脱デフレに奔走する安倍氏の前に立ちはだかったのは、財務省に洗脳されてきた自民党長老などの多数派です。なかでも、財務官僚出身議員の多い宏池会が最大の勢力でした。

 

その宏池会の通称は岸田派であり、2021年10月に就任した岸田文雄首相の出身派閥です。その岸田氏は、就任以来、「2025年度黒字化目標の変更の必要なし」と明言してきていました。しかし、2022年5月末に発表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」案で、「2025年度プライマリーバランス黒字化達成」を外しています。安倍氏を代表とする積極財政派からの攻勢を受けての結果です。

 

骨太の方針は翌年度の予算の骨格を意味するもので、財務省主計局の橋頭堡です。そこで「プライマリーバランス黒字化目標達成」の表現が削除されたとしても、プライマリーバランスの黒字化達成目標が消滅したわけではありません。

 

そこには、「トリック」が隠されています。岸田政権による政府案には、「骨太の方針2021」を来年度予算編成の基準にすると記されてもいます。その骨太2021は、2018年の骨太の方針を堅持しており、そこでは「2025年のプライマリーバランスの黒字化」が目標にされているのです。つまり岸田政権の政府案から言葉は消えても、2018年骨太が堅持される以上、「2025年のプライマリーバランスの黒字化」は生きていると解釈される可能性が高いのです。

 

安倍氏が固執した防衛費に関しては、上限枠を当てはめず、財政規律の例外扱いにすることを財務省は認めました。岸田首相が2022年5月に来日したバイデン大統領に「防衛費の相当な増額」を約束したのですから、財務省も抗えなかったと思います。

 

ただし、プライマリーバランスの黒字化を盾にして、防衛費を5年間で倍増したければ、防衛費以外の政策経費を大幅に削るか、さもなければ消費税などの増税による財源確保を岸田首相に迫るはずです。それを、均衡財政主義者である岸田首相が受け入れる可能性は高い。

 

2022年7月8日、安倍氏は遊説中に旧統一教会に恨みをもつ者に暗殺されました。積極財政派の中心だった安倍氏が亡くなったことで、プライマリーバランス黒字化に向けて財政支出全体の削減と増税による従来の緊縮路線を岸田首相はすすめていくことになるでしょう。日本の脱デフレは遠のいたことになります。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

 

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本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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