「社長は何も聞いてくれない」本社は悪者、部下にはえびす顔の訪問介護ステーション所長の末路

【実例】会社を変えた訪問介護事業者

「社長は何も聞いてくれない」本社は悪者、部下にはえびす顔の訪問介護ステーション所長の末路
(※写真はイメージです/PIXTA)

部下からの要望やクレームを聞くたびに所長は「本社と掛け合ってくる」と受け止めてくれていました。しかし実際は、本社にも社長にも相談することがありませんでした。経営者たちが抱える「組織変革」の悩みを組織改革コンサルタントの森田満昭氏が解説します。

「社長が経営会議に俺を呼ばなくなった」

■阻害要因がなくなると組織変革がスムーズに進み始める

 

問題の幹部が去ったことで、その後の変革は非常にスムーズに進みました。幹部大学では2年かけてリーダーシップや営業計画、自己評価、他己評価について学んでもらいました。また、それまでできていなかった営業行動計画をインストールしてもらいました。目標を設定し、ロードマップを作成し、マイルストーンをつくって行動してもらうと、2年目に全社的に売上が上がり始めたのです。

 

それまで社長は現場の一般社員に同行営業するなど忙しく働いていましたが、育成マインドの上がった幹部にすべて任せられるようになりました。おかげで今は、経営者として会社の5年後の計画を立てる余裕が生まれたといいます。

 

すると、業界全体にも意識が向くようになりました。介護関連事業の会社は社会的な地位があまり高くない印象があることから、社長が業界の雰囲気を変えたいと思い始めたそうです。

 

「同業他社の社長らを集めて自分たちの仕事に誇りをもてるように勉強会をやりたい。まずは社長がしっかりしないと経営も良くならないし、社員も育てられない。自分の会社の経営が良くなってきたので、ほかの会社の組織変革を応援したい」

 

と動きだしたのです。地域のため、業界のために動く時間が社長にできたことも組織変革のメリットです。

 

この会社の組織変革が加速する鍵を握っていたのは、幹部である営業部長の存在でした。もともと営業部長は会社の売上を支えるエースであり、ほかの幹部たちからも営業に関する相談をされるような人望はありましたが、自分の売上だけを考え部下の育成には関心がありませんでした。

 

しかし実際に組織変革リーダー養成塾に参加し組織変革を学び始めると、営業部長は「部下が成長することが本当の意味で会社を支えることになる。そのために自分はどうしたらいいのか」と考えるようになりました。部下の成長が自分の喜びであるという考え方に変化したのです。

 

彼が「俺たちはもっと部下のことを考えなければいけないんじゃないか」と発言すると、その言葉はほかの幹部たちにも重く受け止められました。そこで幹部たちの認知が変わり、組織変革の実現へと大きく舵を切っていくことができました。

 

いくら社長がいいことを言っても社員はあまり聞いていないものですが、同列の仲間の話には大きな影響力があるのです。

 

「最近、社長が経営会議に俺を呼ばなくなったんだよ。役員会議の声も掛からないし、森田さんはどんな指導をしたの」

 

コンサルティングを私に依頼してくれた会長は、恨みがましくぼやいていました。しかしこのぼやきこそがトップの号令を待たずとも従業員が自発的に動く、自走型組織に変わったという証拠です。

 

森田 満昭

株式会社ミライズ創研 代表取締役

 

 

※本連載は、森田満昭氏の著書『社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

森田 満昭

幻冬舎メディアコンサルティング

売上の拡大、コスト削減、新規事業の創出…「自走型組織」が会社の未来を切り拓く! 組織変革のプロが教える自走型組織の作り方とは──。 自走型組織とは、社員が自ら考え、動く組織のことを指します。多くの経営者にとって…

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