(写真はイメージです/PIXTA)

はじめはその決断力のなさから“検討使”と揶揄され、閣僚の不祥事なども相次ぎ、日本株も1割の急落となるなど、数々の“洗礼”を浴びてきた岸田政権。しかし、表面的にはぱっとしないものの、時代を画する政策を次々に打ち出していると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。岸田政権が2023年の日本株を「爆騰」に導くといえる複数の材料を、詳しくみていきましょう。

植田新日銀体制で日本はどう変わる?

櫻井よしこ氏が語る岸田氏の「不思議な強さ」は黒田氏後継の日銀総裁に植田氏を指名したことにも端的に表れている。

 

植田氏は柔軟な現実主義者で、異次元の金融緩和を墨守するリフレ派でも反リフレ派でもなく中庸を行く人物で、黒田氏とは異なり広範な支持を得ている。

 

黒田氏の異次元の金融緩和政策は、日銀OB、学者、エコノミストとメディアから総批判を浴びた。彼らは①日本のデフレは甘受できるもの、②伝統的金融政策は堅持するべきもの、との凝り固まった信念を持っていた。

 

これに日銀にデフレ脱却の圧力をかけた安倍政権の強圧的手法に対する反発が加わり、異次元緩和派と反異次元緩和派とのあいだに修復不能の溝ができてしまった。

 

この強烈な政策批判が「異次元金融緩和は失敗する、デフレ脱却は無理で安易なリスクテイクをするべきではない」という国民世論を作り出し、自己実現的に政策目的の実現を困難にしてきたのである。

 

しかし植田氏にはそうした困難はなく、政策運営はスムーズに進むだろう。

 

そもそも政労使一体となった賃上げ機運が高まり、1%程度のインフレ定着が見え、いまは持続的な2%インフレという目標に向かう途上にある。これこそ黒田氏による異次元金融緩和の成果なのであるが、いまでは2%の持続的インフレの実現という大方針に異を唱える人はいない。

 

現在、求められるものは技術論、戦術論であり、もはやデフレが敵か否かの戦略論は必要ない。黒田総裁を支持してきたリフレ派はインフレ2%の定着が確認できるまで現在の金融緩和政策に手をつけるべきでないと考え、反リフレ派はYCCなどの異例な政策はできるだけ早くやめるべきだと考えるが、どちらも最終ゴールが「2%のインフレの定着」であることに変わりはない。

 

違いはどちらが適切なのかの技術論にすぎず、当面の緩和環境維持の考えに相違はない。その際に決定的なのは、国民的支持を集める力であり、植田氏と補佐する副総裁候補の氷見野氏、内田氏は国民と市場の支持を得られる理想的布陣といえる。

「株高基調」と「円安維持」に期待

その国民的支持のメルクマールはといえば、株価にほかならない。株式市場が懸念する金融政策を岸田氏は望まず、植田氏も採る余地はないのである。また持続的賃上げを定着させるとの観点から、1ドル120円台の円高を容認することもありえないはずである。植田日銀体制は最初から、株高基調の促進と円安維持に向けて政策手段を動員すべく運命づけられている、といえる。

 

それにしても安倍・菅政権の下で日本企業の稼ぐ力が倍増した。法人企業の経常利益は2000~2012年度まで40兆円台で推移していたが、2021年度は86.7兆円へと上昇した。この稼ぐ力の大幅な向上が、岸田政権の「不思議な強さ」の背景にあることは、特筆されるべきだろう。

 

出所:財務省、武者リサーチ
[図表1]日本企業の売上高経常利益率推移 出所:財務省、武者リサーチ

 

出所:各政府機関発表より武者リサーチまとめ
[図表2]アベノミクスの大きな成果 出所:各政府機関発表より武者リサーチまとめ

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年3月6日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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