インフレの見通しを考える…金融政策の想定が必要
[図表5]に示すとおり、「サービス」のインフレ率と米国の政策金利とを比べると、まだまだ金利がインフレに追いついておらず、金融環境は引き締め的とは言えません。
1970年や1974年のケースでは、「サービス」のインフレ率の鈍化を確認しないまま、利下げに転じた結果、インフレの抑制に失敗しています。たしかに「財」の供給ショックは一時的ですが、遅れてくる「サービス」のインフレの根絶を怠ったということでしょう。
このように、どうしてもインフレの見通しを考える上では、それをコントロールするための手段である金融政策について「なんらかの想定を置く」必要があります。
もしかしたら、これまでの大幅利上げによって(これ以上の利上げをせずとも)インフレは収まっていくのかもしれません。しかし、FRBにとって、「サービス」のインフレ率上昇を何もせず見過ごすことは、市場のインフレ懸念が再燃する恐れもあり簡単ではありません。
今後の金融政策を考えると、米連邦準備制度理事会(FRB)としては、
①過去の「経験」をよりどころに、「サービス」のインフレ率が鈍化してくるまで利上げを継続する
②金融政策の「理論」をよりどころに、政策金利を、「サービス」のインフレ率の水準を超えるまで引き上げる
可能性があるでしょう。
以上をまとめると、筆者の見立ては
「インフレは鈍化する方向にあると考えられるものの、そして、FRBもそう考えているはずであるものの、FRBは利上げを継続せざるを得ない(→その結果、市場金利も上昇する)、その後にインフレの鈍化が見えてくるだろう」
というものです。
対策は、今後の「利上げ」と、それに続く可能性が高い「景気後退」の期間を含めて、資金を投じ続けることです。いま、株式全般や成長株式を検討している人は、あらためて「自分はどの相場を取りに行っているか」を思い返すことをお勧めします。
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重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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