(※画像はイメージです/PIXTA)

きょう(2023年2月28日)、厚生労働省は、2022年12月分の「人口動態統計速報」を公開しました。これによると、2022年の出生数が79万9,728人と、統計史上、初めて80万人を下回りました。折しも岸田首相が1月23日に施政方針演説のなかで「次元の異なる少子化対策」を実施する方針を表明したばかりです。本記事では、現在の国による子育て支援策の概要と、その問題点について解説します。

◆高等学校等就学支援制度(授業料の実質無償化)

最後に、高校等の授業料の実質無償化の制度として「高等学校等就学支援金制度」があります。

 

子どもの両親の収入の合計額について、以下の計算式で算出された額が30万4,200円未満であれば、対象となります。

 

(保護者の市町村税の課税標準の額)×6%-(市町村民税の調整控除額)

 

これを収入金額に引き直すと、世帯年収910万円(収入が給与収入のみの場合)です。「世帯の年収目安」と「支給上限額」の関係は【図表】の通りです。

 

文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」より
【図表】「世帯の年収目安」と「支給上限額」の関係 文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」より

 

タイプ2|税制上の優遇措置(所得控除)

税制上の優遇措置には、「扶養控除」と「ひとり親控除」があります。

 

◆扶養控除

16歳以上の子を扶養している場合、「扶養控除」の対象となります。これは、その子の合計所得金額が48万円以下(給与収入だけなら103万円以下)の場合に、一定額の所得控除を受けられる制度です。

 

◆ひとり親控除

ひとり親控除は、2020年から新たに設けられた制度です。

 

「シングルマザー」「シングルファザー」で所得等の所定の要件をみたせば、婚姻歴の有無にかかわらず、35万円の所得控除を受けられる制度です。

 

なお、以前は、「寡婦控除」「寡夫控除」がありましたが、いずれも婚姻歴が要求されていました。しかし、それでは法の下の平等(憲法14条)に反するということで、婚姻歴が不要な「ひとり親控除」の制度が新設されました。これに伴い、「寡夫控除」は廃止され、「寡婦控除」は機能する場面が著しく縮小した状態で残っています。

タイプ3|労働法制を通じた支援

◆産前産後休業

「産前産後休業」は、母親が産前6週間以内と産後8週間以内に取得できる休業です。

 

◆産後パパ育休

「産後パパ育休」は、父親が子の出生後8週間以内に取得できる休業です。

 

これは、いわば母親の「産前産後休業」に準じた休業を父親にも認めたものであり、2022年10月からスタートした新しい制度です。

 

夫が出産直後の妻と子を支え、夫婦で協力して子育てに取り組めるようにするための制度といえます。

 

出生後8週間を経過したら、この産後パパ育休とは別に「育児休業」を取得できます。

 

◆育児休業

「育児休業」は、子を養育する労働者が、雇用保険制度に基づいて、原則として子が1歳になるまでの間に取得でき取得できる休業です。母親も父親も取得できます。

 

法律上の制度なので、勤務先に育児休の制度がなくても、勤務先は取得を拒否することができません。

 

しかし、男性の取得率は2021年時点で13.97%ときわめて低い水準にとどまっています(厚生労働省「令和3年度(2021年度)雇用均等基本調査」)。

 

◆両立支援等助成金

「両立支援等助成金」は、中小企業事業主に対する助成金です。

 

従業員に対し、仕事と出産・育児、介護などとの両立できるよう所定のサポートを行った場合に受け取ることができます。

 

ただし、むしろ、労働者の育児と仕事の両立に対し非協力的な雇用主に対するペナルティを強化する方が先ではないかという指摘もあります。

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