(写真はイメージです/PIXTA)

好調を継続する、東京の不動産市場。オフィス拡張移転DIを業種別・エリア別・ビルクラス別に分析した、ニッセイ基礎研究所の佐久間誠氏によるレポートです。

3.「新宿・四谷」、「西新宿」は拡張移転意欲が高まる一方、「丸の内・大手町」は低下

次に、2022年下期のオフィス拡張移転DIをエリア別に確認する*6。東京都心部16エリアにおいて、拡張移転の多かった上位5エリアは、第1位が「新宿・四谷(オフィス拡張移転DI 81%)」となり、続いて「西新宿(同79%)」、「代々木・初台(同75%)」、「内神田・外神田(同73%)」、「麹町・飯田橋(同72%)」の順となった(図表8)

 

【図表8】
【図表8】

 

これに対して、縮小移転の多かった下位5エリアは、オフィス拡張移転DIが低い順に、「五反田・大崎・東品川(オフィス拡張移転DI50%)」、「丸の内・大手町(同54%)」、「浜松町・高輪・芝浦(同54%)」、「赤坂・青山・六本木(同58%)」、「新橋・虎ノ門(同61%)」となった(図表9)

 

【図表9】
【図表9】

 

前期に続いて、オフィス拡張移転DIは全てのエリアにおいて基準となる50%を上回った。

 

このうち、大規模ビルが集積する「丸の内・大手町」のオフィス拡張移転DIは、2022年下期に大幅に低下した。同エリアの内訳(拡張・同規模・縮小の比率、2022年上期→下期)の推移を見ると、「拡張53%→29%」、「同規模41%→50%」、「縮小6%→21%」となった(図表10)。同規模移転が半数を占めるなか、拡張移転と縮小移転が拮抗している。コロナ禍を受けてワークプレイス再構築の検討を進めてきた大企業を中心に、オフィス縮小や集約統合が顕在化するなか、大規模ビルが集積する同エリアの順位が低下した。

 

【図表10】
【図表10】

 

企業規模とオフィス拡張意欲の関係性を確認すると、平均従業員数とオフィス拡張移転DIは、2019年~2021年(▲0.2~0.0)は無相関、あるいは弱い逆相関だったが、2022年は▲0.5の逆相関となった(図表11)*7。経済活動が徐々に正常化に向かうなか、中小企業は拡張意欲を強めた一方、大企業は集約統合やオフィス床削減など縮小移転の姿勢を継続した可能性が考えられる。

 

【図表11】
【図表11】

 

一方、今回は「新宿・四谷」と「西新宿」が上位にランクインした。同エリアでは、拡張意欲が弱い「製造業」や「卸売業・小売業」の比率が低い傾向にあり、拡張意欲の高い「その他サービス業」の比率が高い。また、「新宿・四谷」については中小企業が多いことも、オフィス拡張移転DIの上昇につながったと考えられる。

 

*6:東京都心部の各16エリアの概要については、末尾の【参考資料2】「本稿の東京都心部16エリアと三幸エステート「オフィスレントデータ2023」記載エリアの対応表」を参照。

*7:平均従業者数は、経済センサスのデータをもとにエリア毎の従業者数を事業所数で割った値である。

4.ビルクラス別拡張移転DIでは、Aクラスビルが低下する一方、Bクラスビルが上昇

オフィス拡張移転DIをビルクラス別*8に確認すると、2021年上期まではAクラスビルの低下が目立った。しかし、2021年下期にAクラスビルが60%台を回復し、2022年上期にはBクラスビルとCクラスビルも底打ちし上昇に転じた。2022年下期は、Bクラスビルは上昇が加速した一方、Aクラスビルは低下し、Cクラスビルは概ね横ばいとなった(図表12)

 

【図表12】
【図表12】

 

2019年下期のAクラスビルのオフィス拡張移転DIは86%と、ほとんどが拡張移転であった。当時、IT企業を中心に企業の拡張意欲が強く、人材確保や働き方改革を目的としたオフィス移転も多く見られるなか、立地やスペックに勝るAクラスビルがこれら需要の受け皿となった。

 

コロナ禍以降、Aクラスビルのオフィス拡張移転DIは、2020年下期に25%と大幅に低下し、2021年上期も39%と低迷した。先行き不透明感が強いなか、Aクラスビルへの拡張移転を決定する企業は少なく、グループ会社の集約など縮小移転が増加した。

 

2021年下期は拡張移転が増加し、そのニーズを吸収したAクラスビルのオフィス拡張移転DIは64%に上昇した。しかし、2022年上期は61%と頭打ちとなり、下期は56%に低下した。2022年に入り、世界的なインフレや欧米中銀の金融引き締め、景気悪化懸念の高まりなど、外部環境の悪化が逆風となり、賃料負担力の高い大手企業や外資系企業のオフィス拡張意欲が低下している。

 

*8:各クラスは、三幸エステートの定義を用いる。三幸エステートでは、エリア(都心5区主要オフィス地区とその他オフィス集積地域)から延床面積(1万坪以上)、基準階床面積(300坪以上)、築年数(15年以内)および設備などのガイドラインを満たすビルからAクラスビルを選定している。また、基準階床面積が200坪以上でAクラスビル以外のビルなどからガイドラインに従いBクラスビルを、同100坪以上200坪未満のビルからCクラスビルを設定している(詳細は三幸エステート「オフィスレントデータ2023 資料編 東京都心部 A・B・Cクラスビル ガイドライン」を参照)。

 

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年2月21日に公開したレポートを転載したものです。
    ※本稿は三幸エステート「オフィス ユーザー レポート」を加筆・修正の上、転載したものである。

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