円安の「プラス効果」は1年遅れて「今年」から現れる!? これからの日本経済に起こる「劇的な変化」とは

円安の「プラス効果」は1年遅れて「今年」から現れる!? これからの日本経済に起こる「劇的な変化」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

いままで通り頑張っていても給料が上がらないのは、なぜなのでしょうか。本連載ではマクロ経済解説に定評のある、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、著書『給料が上がらないのは、円安のせいですか? 通貨で読み解く経済の仕組み』(PHP研究所)から、日本人の給料が上がらない理由と、その原因となっている経済の仕組みについて、講義形式で解説します。

海外旅行では国内のGDPがプラスにならないワケ

永濱:国内のGDPの面から考えると、どうなるか。海外旅行だと、日本人が海外でじゃぶじゃぶお金を使っても「海外からのサービスの輸入」という扱いになるので、国内で生み出された付加価値を示すGDPにはマイナスとしてカウントされます。それに対し、国内旅行なら、国内でお金を落としてくれるので、GDPにプラスにカウントされます。

 

つまり、自国通貨が安いほうが国内に富が落ちやすいから、経済にとってはプラスということにはなるのです。

 

やすお:なるほど。このような世の中の仕組みを知っているのと知らないのとでは、経済を見る目がまったく変わってきますね。

円安と円高は振り子のように

やすお:もしかすると、国内でお金が回り出せば円安は自然と収まったりする…? みんな円を欲しがりますもんね。

 

永濱:鋭いですね。円安だと、世界中の人が日本のモノやサービスをたくさん買うようになります。そのときに、自国通貨を円に替えるので、円の需要が増えます。だから日本のモノやサービスが売れやすいときは円高になりやすくなるのです。

 

反対に、円高になってみんなが海外旅行に行くと、それだけ円を外貨に両替するので、円の需要が落ちて円高が収まりやすくなります。

 

やすお:円安と円高は振り子みたいなものなんですね。

 

永濱:こうした国内外の取引をトータルで見たのが経常収支です。経常収支は、海外から受け取る所得から、国内から海外へと支払った所得を引いたもの。経常収支の黒字が大きいと、自国通貨が高くなりやすい傾向があります。

 

日本は経常黒字、すなわち海外に支払うよりも海外から受け取る所得のほうが多いので、それだけ相対的に円が買われやすかったのです。

 

そういう国は、自国通貨が高くなりやすいんですね。日本はこれまでずっと経常黒字だったので、円高になりやすい状況にありました。

 

やすお:そうだったんだ。

 

永濱:ところが、2022年に入ってロシアのウクライナ侵攻で輸入品の値段が上がったことで、貿易赤字額が拡大し、経常収支の黒字が縮小しました。これも、円安の一因です。

 

ただ、円安になると日本の商品の国際競争力が高まるので、結果的に円高に向かうことになります。そうやって為替はバランスがとれていくのです。

 

これは「ゴルフのハンデ」のようなものです。

 

やすお:面白いなぁ。為替は自浄作用みたいなものがあるんですね。

 

永濱:そうですね。そういう自浄作用が利くから、一般的な先進国は、変動相場制にするわけです。

 

 

永濱 利廣

第一生命経済研究所

首席エコノミスト

 

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