「タワマン節税」崩壊へ!富裕層の相続税対策で「評価額70%減」でウハウハも一転…悲惨なシナリオが待ち受けるワケ

「タワマン節税」崩壊へ!富裕層の相続税対策で「評価額70%減」でウハウハも一転…悲惨なシナリオが待ち受けるワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

富裕層の相続税対策として人気があったいわゆる「タワーマンション節税」について、国税庁が、相続税におけるマンションの評価方法の変更に乗り出しました。これは、2022年12月に出された与党の「2023年度税制改正大綱」を受けたものです。本記事では、タワマン節税のしくみと問題点、および検討が始まった評価方法の見直しの方向性について解説します。

◆高層階ほど「市場価格」と「相続税評価額」の乖離が大きい

次に、建物については、タワーマンションにおいては高層階ほど建物の「市場価格」と「相続税評価額」の乖離が大きくなります。

 

どういうことかというと、タワーマンションは高層階ほど人気があり、市場価格が著しく高くなっています。

 

これに対し、評価額は、低層階と高層階とでそこまで顕著な差はありません。すなわち、20階以上のマンションにおいては、建物の評価額は、以下の式が成り立つように割り当てられます。

 

1階の評価額+0.25%×(階数-1)

 

たとえば、30階建てのタワマンであれば、1階と30階を比べると、30階のほうが1階より7.25%高くなるということです。

 

なお、上記計算式は2018年以降に建設されたマンションに適用されるものです。それ以前は、なんと、評価額がすべての住戸に均等に割り振られ、乖離がさらに大きくなっていました。

 

たとえば、東京都内の築9年・43階建てタワーマンションの23階の住戸は、市場価格1億1,900万円のところ、相続税評価額が3,720万円と、乖離率3.2倍にもなっています(【図表】参照)。

 

国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」資料P6より
【図表】マンションの市場価格と相続税評価額の乖離の事例 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」資料P6より

 

「それではいかん」ということで、2017年税制改正において現在の算定方法が採用されることになったのです。しかし、まだまだ、低層階と高層階の市場価格の格差を埋めるには程遠いといわざるをえません。

タワーマンション節税の問題点

タワーマンション節税で問題視されている点は、以下の2つに集約されます。

 

1. 相続税の税負担の不公平が生じている

2. 富裕層が相続税対策のためだけに利用するケースがある

 

◆問題点1. 相続税の税負担の不公平が生じている

タワーマンションの高層階の住戸の市場価格は、低層階の住戸よりも著しく高いにもかかわらず、相続税評価額はそれほど高くありません。

 

したがって、同じタワーマンションの低層階の住戸のみならず、他の建物と比べても著しく不公平ではないかという指摘があります。

 

◆問題点2. 富裕層が相続税対策のためだけに利用するケースがある

次に、富裕層がもっぱら相続税対策のために利用されている実態があるという指摘があります。

 

この点については、2022年4月に最高裁判決が下されました(最判令和4年4月19日 相続税更正処分等取消請求事件)。

 

事案の概要は以下の通りです。

 

【事案の概要】

・被相続人(X・90歳)が亡くなる前に約10億円の借入をし、8億3.700万円の「マンションA」と約5億5,000万円の「マンションB」を購入した(総額13億8,700万円)

・相続開始から約9カ月後、相続人(Y)はマンションAを5億1,500万円で売却した

・その後、相続人(Y)は相続税の納税申告において、税法上の評価方式を用い、マンションAを約2億4万円、マンションBを約1億3,366万円と評価し(総額約3億3,370万円)、そこから被相続人(X)の10億円の借入金額を差し引いて相続税を0円として申告した

 

これに対し、国税庁は、不動産鑑定による実勢価格に基づき、マンションAを約7.5億円、マンションBを約5.2億円と評価して税額を計算し直しました。そして、相続人(Y)に対し約3億円の追徴課税の更正処分を行いました。

 

最高裁は、マンションAとマンションBがもっぱら相続税対策のためだけに購入されたことが明らかであるとして、国税庁の処分を有効としました。

 

その判断の根拠として、以下の事実が認定されました。

 

・信託銀行が作成した稟議書に「相続税対策として不動産を購入するための資金」との記載があった

・被相続人(X)はマンションA購入時すでに90歳と高齢であり、購入目的が相続税対策以外に考えられない

・相続人(Y)が相続開始後、相続税の納税申告前に、マンションAを購入時の価格とそれほど変わらない額で売却した

 

マンション購入のための融資を受けるのに際して銀行に「相続対策のため」と目的が明示され、しかも、相続開始直後に物件が売却されたことをとらえ、「相続税を免れる以外の目的は考えられない」と判示されたのです。

 

そもそも、不動産の相続税評価額が低く抑えられている理由は、不動産が通常、居住の場、事業を行う場であることを重視してのことです。

 

そのしくみを、相続税対策のため「だけ」に利用することは、法の趣旨目的を逸脱するものであり、許容できないということです。

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