(※写真はイメージです/PIXTA)

人生の中で、ローンなどの「借金」をし、債務者になることは少なくないと思います。その際、もし「財産開示手続」を迫られたとき、適切な対応を取らなければ、刑事罰を受ける可能性まで有るのです。そうした事態を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。相続に必要な知識や相続を円満に進めるコツについて、後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイルが運営する、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』の記事から、一部編集してお届け。今回は、「財産開示手続」についてお伝えします。

「財産開示手続」の改正前と改正後の変化

(※写真はイメージです/PIXTA)
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財産開示手続はどこが変わったのでしょうか。改正前と改正後の変化について確認しておきましょう。

 

財産開示手続はどこが変わった?

財産開示手続で変わったのは、①要件が緩和されたこと、②制裁が強化されたことの2点です。

 

そして、今回の改正では、既存の財産開示手続を拡充するとともに、債務者以外の者(第三者)から債務者財産に関する情報を取得するための手続を新たに導入し、両者を合わせて「債務者の財産状況の調査」と整理したのです。この「第三者からの情報取得手続」についても、項を分けて取り上げることにします。

 

まず、要件の緩和と制裁の強化について、改正前と改正後を比較しながら、その変化を見てみましょう。

 

改正前と改正後の変化

財産開示手続の上記2点についての改正前と改正後の変化は、以下のようになります。

 

要件の緩和

改正前は、金銭債権についての強制執行の申立に必要とされる債務名義のうち、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、確定した支払督促または執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)については、これに基づいて財産開示手続の実施を申し立てることを認めていませんでした(改正前の民事執行法197条1項柱書)。

 

しかし、この規律に対しては、等しく強制執行の基礎となる効力を付与されているはずの債務名義を、開示手続との関係においてのみ種類ごとに異なって扱うことは不合理であるとの批判があったことから、改正法ではすべての債務名義につき等しく開示手続の基礎となることを認めました(改正後の民事執行法197条1項)。

 

債務名義とは、確定判決、確定した支払督促、執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)、和解調書など、債権者が債務者に請求できる権利(請求権)があることを認める書類です(民事執行法22条)。

 

債務名義を得るには、簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、公証人役場で手続をとる必要があります。

 

とりわけ執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)によって財産開示手続ができるようになったことは、近年社会問題となっている養育費の不払いとの関係で大きな意義をもちます。

 

制裁の強化

改正前は、正当な理由のない不出頭や虚偽陳述に対しては30万円以下の過料に処すという制裁規定が置かれていましたが、軽微な秩序罰であり開示を強制する効果はほとんどないとの批判がありました。(改正前の民事執行法206条1項)

 

改正法では、制裁を強化し、開示手続に非協力的な債務者に対しては6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰を科すこととしました(改正後の民事執行法213条1項5号・6号)。

 

第三者からの情報取得手続

新設された「第三者からの情報取得手続」を確認してみましょう。(改正後の民事執行法204条~211条)

 

債権者は、今回の改正により、債務者以外の第三者からも、債務者の財産に関する情報を得られるようになりました。

 

つまり債務名義を有する債権者は、執行裁判所に申立をして第三者に対し、債務者の財産に関する情報を書面で提供することを命じてもらうことができるようになったのです。

 

債権者は、具体的には債務者の財産に関する情報を以下のように取得することができます。

 

①登記所(法務局)から不動産に関する情報(205条)

②市町村、日本年金機構等から給料の支給者に関する情報(206条)

③金融機関(銀行、信用金庫、農業協同組合、証券会社等)から預貯金債権、上場株式、投資信託受益権、社債、国債等に関する情報(207条)

 

ただし、債務者の不動産と給料の支給者に関する情報取得手続(上記①②)については、債務者の不利益にも配慮し、それに先立って債務者の財産開示手続を実施する必要がありますが(205条2項、206条2項)、預貯金債権等に関する情報取得手続(上記③)についてはその必要はありません。

 

また、債務者の給料の支給者に関する情報取得手続の申立をすることができるのは、民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権(養育費その他の扶養義務に係る債権)又は人の生命身体の侵害による損害賠償請求権を内容とする債務名義を有している債権者に限られます(206条1項柱書)。

 

上記①~③により、その後の強制執行の実効性が確保されるようになりました。

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※本記事は、株式会社サステナブルスタイルが運営する相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』より転載したものです。

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