
デジタル化が産業全体で進むことにより、既存の経営戦略が通用しなくなった21世紀。このようななか、企業の生き残りをかけた経営変革には「サイバー空間」の活用が大きなカギとなると、東京大学客員研究員の小川紘一氏はいいます。では、サイバー空間を活用するにはどうすればよいのでしょうか?
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2020年代の産業を変えるのは「サイバー空間」
本記事が焦点を当てるデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、フィジカル空間に軸足を置く企業を新しい姿の成長軌道に乗せるための経営変革であり、さらには金融政策や財政政策で実現し得なかった経済成長を、新しい姿の成長モデルによって実現させる政策変革である。
経営変革としてのDXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルをつくりかえ、競争優位を構築することだが、これまでDXを語る多くの識者は、組織文化、人材と陣容、トップのリーダーシップ、ゴールの設定、優先順位とロードマップ、投資配分権などが重要と繰り返した。
確かにこの視点は重要だが、本記事が焦点を当てるDXでは、いずれも必要条件に過ぎない。そもそもDXが必要となったのは、非常に安定といわれた産業構造ですらデジタル化によって瞬時につくりかえられ、経営戦略も成長戦略も機能不全になったからではないか。
強大な経済パワーがなければ産業構造を変えることができない。2010年代に金融や小売業をつくりかえ、2020年代に自動車産業を含む多くの産業をつくりかえるのは、サイバー空間がつくり出す新しい姿の強大な経済パワーである(※1)。
サイバー空間はクラウドやデジタルプラットフォーム、仮想化など、新しい姿のデジタル技術によってつくり出された。したがって本記事では、これまで語られた必要条件から一旦離れ、サイバー空間がつくり出す強大な経済パワーを取り込む仕組みづくりを、DXに向けた十分条件として語りたい。レガシーインフラに囲まれた企業が業務プロセスやビジネスモデルを大きく変革するには、自らの手でサイバー空間の経済パワーを使いこなさなければならない(※2)。
※1 新しい経済パワーとは、サイバー空間の市場が持つ基本機能としての“時間・距離・費用”がどこでもゼロの経済がつくり出す経済パワーである。これについては『1990年代から大敗しているが…「日本の製造業」が再起するにはどうすべきか?』で解説した。人間がこのような経済パワーを活用できるようになったのは21世紀になってからである。
※2 “見える化”の先の“できる化”は、その方向性が本稿の定義する十分条件とほぼ同じでないか。多くの識者が“見える化”の先に“共有化”を唱えるが、さらにその先にある行動改革としての“できる化”がなければDXは成功しない。
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