(※画像はイメージです/PIXTA)

岸田首相は先月の国会での施政方針演説で「異次元の少子化対策」を宣言しました。しかし、前途は多難です。なかでも、「仕事と子育ての両立」ができる環境の整備は急務ですが、男性の育児休業取得率が13.97%しかない等の現状を克服するのは容易ではありません。本記事では、2022年4月から施行されている「育児休業法」の改正法の概要を振り返りながら、克服しなければならない課題を検証します。

3. 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(2022年10月より施行)

産後パパ育休は、父親が、子の出生後8週間以内に取得できる休暇です。これにより、父親は、出産直後の母親と子を身近で支えることができます。

 

育児休業とはまったく別の制度であり、両方取得することができます。

 

合計4週間まで取得でき、かつ、分割して2回まで取得することもできます。

 

たとえば、子の出生後8週間以内であれば、出生時・退院時に1回取得しておいて、あとでさらにもう1回取得することもできるのです。

 

産後パパ育休を取得した場合、「出生時育児休業給付金」を受給することができます。金額は給与日額の3分の2(67%)です。

4. 育児休業の分割取得が可能に(2022年10月より施行)

従来は育児休業を複数回に分けて取得する「分割取得」が原則として認められていませんでした。それが、育児休業を分割して2回まで取得できることになりました。

 

これにより、父親と母親が交代で育児休業を取得するなど、柔軟な対応ができるようになりました。

 

たとえば、父親が1回目の育児休業を取得し、母親が職場復帰するタイミングであらためて2回目の育児休業を取得するといった対応が可能になります。

5. 「1歳以降」に育児休業を再取得する場合の開始日の柔軟化(2022年10月より施行)

育児休業制度には従来から「再取得」という制度があります。すなわち、育児休業が取得できるのは原則として、子が1歳になるまでの間です。ただし、その後も保育所に空きがないなどのやむを得ない事情がある場合は、育児休業の「再取得」をすることができます。

 

この育児休業の再取得について、以前は、「1歳」「1歳半」のどちらかの時点からしか開始できませんでした。しかし、改正により開始日が柔軟化されました。また、2回に分けて取得することも可能になりました。

6. 育児休業の取得情報公表の義務化(一部事業者のみ・2023年4月から施行)

2023年4月から、従業員1,000人超の事業者について、育児休業の取得情報を公表することが義務化されます。

 

しかし、従業員1,000人超の事業者はごく一握りであり、後述する懸念点とも相まって、早くも実効性が疑問視されます。

課題は「実効性確保」だが…

2022年4月から施行されてきている育児休業法の一連の改正は、きちんと履行されさえすれば、育児休業の取得を促進し、男性・女性ともに、仕事と育児を無理なく両立できるのに役立つのは疑いありません。これによって、少子化対策として一定の効果が見込まれると考えられます。

 

しかし、問題は、実効性をどうやって担保するかということです。わが国の労働関係法制は、長らく、実効性確保が課題となってきました。「労働基準法」も「男女雇用機会均等法」も、実効性が十分に確保されてこなかったばかりに、理念と現実の乖離が発生しているという実態があります。

 

女性が育児のため仕事を辞めたりキャリアアップを諦めたり、男性が育児休業を取得しようとしたら理解を得にくかったりといった事態は、放置されたままといっても過言ではありません。

 

その意味では、以下のように、違反した事業者に対するペナルティが軽度なものにとどまっていることが、懸念されます。

 

1. 労働局から助言・指導・勧告を受けたのに対し、従わない場合、企業名が公表される

2. 労働局長から実施状況につき報告を求められたのに対し、報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合、20万円の過料が課される。

 

「企業名の公表」「20万円の過料」はごく軽微なものであり、制裁としての実効性が乏しいといわざるを得ません。

 

「異次元の少子化対策」を実現するには、育児休業法等の法規制に強力な実効性を持たせることが急務であるといえます。さもなければ、掛け声倒れに終わってしまうことが明らかに予期されます。

 

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