(※写真はイメージです/PIXTA)

所有する不動産に自分のほかに所有権を持つ人がいる「共有不動産」は、売却時や管理費負担の所在などで揉めやすくなります。本記事では共有のアパートを持つ、高齢化した兄弟が、アパートが原因で揉めないようにするための方法を、司法書士の近藤崇氏が解説します。

家族(民事)信託とは?

家族(民事)信託の登場人物は3つに分解されます。委託者、受託者、受益者の3つがそれにあたります。概念的・形式的な所有権については、信託の組成時に受託者に移転すると考えるのが一般的です。しかし用語が難解ですので、少し法律的には正確ではないことは承知ですが、今回はわかりやすく下記のように言い換えます。

 

委託者≒「元々の所有権者」

受託者≒「管理・処分をする権利」を有する者

受益者≒「利益を享受する権利」を有する者

 

今回のケースでも家族信託を用いることにします。家族(民事)信託の最大の有用な点は、所有権を「管理・処分をする権利」と「利益を享受する権利」を有する者を別個に定められる点にあります。

 

■当初(1回目)の家族(民事)信託組成の結果

 

委託者≒元々の「所有権者」はAとB

受託者≒「管理・処分をする権利」を有する者はE(甥)です

最初の受益者≒「利益を享受する権利」を有する者はAとBとなります

 

この信託の契約者は「AとB」と「E」になります。健康に少し不安のあるAはもちろんのこと、もしBについても認知症などを発症してしまったとしても、日常の収益不動産の管理、いざというときの売買手続きを行うのはEになります。ABの存命時においての、資産の凍結のリスクは避けることができます。

 

また残念ながら必ず将来どこかで、AかBのどちらかの死亡が発生します。このときを想定できるのも、信託の有益な点です

 

仮にAが先に死亡した場合、信託は下記のように第2形態とするよう設計します。

 

■Aの死亡後の結果

 

「元々の所有権者」はAの持分→B(Bの単独所有)

「管理・処分をする権利」を有する者は変わらずE(甥)です

「利益を享受する権利」を有する者はBのみとなります

 

この場合、Aに仮に遺言があろうと無かろうと、すでに不動産自体が信託財産に組み入れされていますので、Aの持分は確実にBに承継されます。ただし、Aの預金などの金銭財産については、信託口口座などを作成し入金していれば、信託財産として扱われますが、そうでない場合、通常の遺産分割の対象になることがあります。このため「家族(民事)信託」を行った場合でも「遺言」と併用することも多くあります。

 

そして、またBが死亡する日も必ずどこかで発生します。このとき、次の委託者および受益者として、Cが存命の場合はCが委託者および受益者となり、もしCが死亡してた場合、Cの子のEが委託者および受益者が移転するように設定します。

 

■AB双方の死亡後は

 

委託者≒「元々の所有権者」はB→C(またはE)

受託者≒「管理・処分をする権利」を有する者はE(甥)のまま

最初の受益者≒「利益を享受する権利」を有する者はC(またはE)となります

 

AB死亡時にCが存命で、Cに委託者および受益者が移転したとしても、さらにCの死亡時にはEに委託者および受益者が移転するように、当初からの信託を設計しておきます。Cが存命としてもかなりの高齢ですが、実際に管理・処分をする権利を有しているのはEですので、問題にはなりません。

 

いずれ訪れるCの死亡時には、委託者も、受託者も、受益者も、すべて同一人物のEです。ここまでくれば、もはや信託を用いて所有権を分離する必要がありませんので、信託を終了するようにします。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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