(※画像はイメージです/PIXTA)

米ドル/円相場は、昨年10月につけた「1ドル151円台」をピークに円安地合いが終焉、以降は米ドル安・円高トレンドが続いています。しかし、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、足元の円高を「行き過ぎ」と捉えており、2月に円高のピークをつけたあとは「円安に転換する」と予想します。それはなぜか、みていきましょう。

日銀緩和政策転換の影響は「過剰反応」か

ただそういった見方に対しては、とくに日本の金利、円金利の観点から違和感を覚える人が少なくないかもしれません。

 

日銀は2022年12月の会合で、YCC(イールドカーブ・コントロール)政策の、10年債利回りの許容上限を、0.25%から0.5%へ拡大しました。

 

このような日銀の政策転換を受けた円金利の上昇は、持続的な円高、たとえば2023年中に120円割れへ向かう可能性も十分あるといった見方はありそうですが、本当にそうでしょうか。

 

日本の10年債利回りは、2022年春に、日銀が長期金利上昇抑制策として、10年債利回りの0.25%以上の上昇を阻止する政策を採用するまでは、基本的に米10年債利回りと、水準は違うものの、値動きはほぼ重なって推移していました(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]日米の10年債利回りの推移(2021年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ところで、ECB(欧州中央銀行)は日銀の長期金利上昇抑制策のような債券市場への「介入」を行いませんでした。すると、水準は異なるものの、値動きに高い相関関係が続きました(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]独米の10年債利回りの推移(2021年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上のように見ると、今回の日銀による長期金利上昇抑制といった金利市場への「介入」がなければ、基本的に日独などの先進国の金利は、米金利に連動するということになりそうです。

 

そんな米金利は、2022年11月頃から低下傾向に変わりました。日本の金利は、基本的に米金利で決まるということなら、日銀が長期金利上昇抑制策の見直しに動いても、日本の金利上昇にはおのずと限度があるのではないでしょうか。

 

そもそも、日銀が2022年12月の会合で、10年債利回りの上限拡大に動いたのは、米金利が低下傾向に転じたといった日本の金利を取り巻く環境変化が影響した可能性がありそうです。そう考えられるのは、この会合終了後の記者会見で、上限の再拡大の可能性を質問されたことに対して、黒田総裁は以下のように発言していたからです。

 

「それはあくまでも、いわば内外の物価とか金融資本市場の動向によるものでありまして、欧米の物価上昇率は、米国の場合は明確にピークアウトしていますし、(略)それぞれの政府や中央銀行の見通しでは、来年において物価上昇率が下がっていくという見通しになっておりますので、そういう状況のなかで、(略)これまでのような調子でどんどんすごい勢いで金利が上がっていくとか、そういうことはちょっと考えにくいと思います」

 

2月は日銀首脳陣、総裁、副総裁の後継人事を巡る思惑などから円金利上昇へのプレッシャーは続きそうです。さらなる10年債利回り上限見直しなどを見込み円金利が一段と上昇、それに連れて円も一段高に向かうリスクはあるでしょう。

 

ただそれは、これまで見てきたことからすると、おのずと限界もありそうです。

 

すでにみたように、90日MAかい離率などから、米ドル安・円高は短期的な行き過ぎ懸念が強くなりました。このような「行き過ぎた円高」が起こった一因は、日銀の緩和見直しに対する「円金利上昇=円高」の過大な思惑ではないでしょうか。

 

以上から、2月は米ドル安・円高がクライマックスを迎えて、行き過ぎの反動から米ドル高・円安へ戻す転換点となる可能性が高いと考えます。

 

それを踏まえた2月の米ドル/円の予想レンジは、125~133円で想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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