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後継者が事業を引き継ぐときにかかる税金負担を猶予する「事業承継税制」。手続きが複雑かつ期日が決まっていることもあり、活用にはいくつもの壁も。今回は個人版、法人版と2種類あるうち、「法人版事業承継税制」を中心に解説していきます。

事業承継税制活用の流れ

うまく制度を活用すると、本来納めるべき贈与税や相続税を猶予でき、最終的には免除できる可能性もあると分かりました。スムーズに利用できるよう、法人版事業承継税制を使うときの流れを確認しておくと役立つはずです。

税負担の把握、事業承継の準備

まずは事業承継をするときに、どのくらいの税負担が発生するか確認しましょう。贈与税や相続税の計算は複雑なため、税理士に試算してもらいます。計算の結果、無理なく税金を負担できると分かれば、無理に事業承継税制を利用する必要はありません。税負担を踏まえた上で、事業承継の準備にもとりかかります。

 

先代経営者が保有している自社株式を後継者が相続で引き継ぐには、『遺言書』の作成がおすすめです。相続人の話し合いである『遺産分割協議』でも可能ですが、他の相続人が自社株式を引き継ぐ可能性も出てきます。自社株式について相続税の猶予を受けるなら、相続が発生してから申告期限を迎えるまでに、相続税の申告書と定められた書類を提出しましょう。税額+利子税額に見合う担保の提供も必要です。

特例承継計画の作成

2018年の税制改正で設けられた特例措置を受けるには、『特例承継計画』を作成し、都道府県知事に提出しましょう。特例措置は期間限定です。2024年3月末までに提出の上、確認してもらわなければいけません。特例承継計画には下記の内容を記載します。A4用紙3枚程度にまとめておけば問題ありません。

 

会社名

先代経営者の氏名

後継者の氏名(最大3名)

事業内容

承継時までの経営の見直し

5年間の承継実施内容

認定支援機関等の所見

株式の贈与、相続

事業承継における経営権の移行は、株式の贈与や相続により行われます。一括で先代経営者の持っている株式を100%贈与すれば、全ての株式に対して納税猶予や免除が可能です。

 

実際には先代経営者が株式のすべてを後継者に承継するのではなく、ある程度の株数を保有しておくケースもあります。後継者へ2/3以上一括贈与していれば、先代経営者が株式を持っていても構いません。贈与するときには、贈った・贈られたという事実を客観的に示せるよう、贈与契約書を作成しましょう。2通作成し先代経営者と後継者とで1通ずつ保有します。

認定申請、税務署への申告

ここまで準備ができたら、最後に『都道府県知事の認定』を受けましょう。発行してもらった認定書の写しを受け取ったら、税務署に贈与税や相続税の『申告書』を提出します。事業承継税制と相続時精算課税制度を併用するなら、相続時精算課税制度の利用について申告書に記載が必要です。全ての手続きが完了したら、事業承継税制を活用し納税猶予や納税免除を受けられます。

猶予と免除の条件や期限に注意して活用を

事業承継税制は後継者が会社を引き継ぐ際の税負担を抑える制度です。贈与税や相続税の納税を猶予し、最終的に免除を受けられる可能性もあります。

 

ただし、利用するためには、「会社」・「先代経営者」、及び「後継者」が要件を満たしていなければいけません。手続きの期限もあるため、早めに行動し準備を進ましょう。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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