「遺言書」があってもトラブルが避けられない場合も
一昨年(令和3年)、家庭裁判所に申立てがあった遺産分割事件数は「1万3,447件※」でした。しかしKさんたちのように、家庭裁判所に調停を申立てることなく納まった案件も数多くあることでしょう。
※ 最高裁判所「令和3年司法統計年報(家事編)第44表 遺産分割事件数」より
Kさんたちが円滑に父からの遺産相続をするためには、父が生前に話した内容を、遺言書に書き残すべきだったかもしれません。しかし、いくら遺言書があっても、その内容が「相続人に最低限保障された遺産の取り分」を侵すようであれば、Jさんが言い出したような遺留分にまつわるトラブルが発生してもおかしくありません。
筆者がシミュレーションしたところ、Kさんが姉Jさんに支払いを続けるあいだ、家計支出への影響は免れません。しかし、子どもたちの教育費に影響が出るほどではなく、また、工場で働く従業員もいままで通りの生活ができることがわかっています。また、両親から相続があったことで、3人とも資産額は増加する見込みです。
とはいえ、権利を主張することは大切ですが、お互い思いやりを持って生きたいものです。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】