(写真はイメージです/PIXTA)

明らかにパワハラであるとわかる場合は対策が取りやすいものの、実際に相談される事案は、人によって判断が分かれそうな「グレーゾーン」であることがほとんどです。このような場合、どうやって「パワハラかどうか」を判断すればよいのでしょうか。「グレーゾーンのパワハラ」への対処法について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士がくわしく解説します。

“これってパワハラ?”…迷ったときの「判断材料」6つ

ある言動が、パワハラとしてクロであるのかグレーゾーンであるのかは、その言動のみを切り取って単独で判断できるものではありません。パワハラに該当するかどうかは、次の点などを総合的に考慮したうえで判断されます。

 

1.言動の目的

問題となっている言動がどのような目的で行われたかどうかは、パワハラかどうかの1つの判断材料となります。

 

たとえば、言動の受け手の業務上の成長を目的とした叱咤激励であったのか、退職に追い込むためや嫌がらせをする目的であったのかなどです。

 

2.言動が行われた経緯や状況

その言動がどのような経緯や状況下で行われたのかということも、パワハラかどうかの重要な判断材料となります。

 

たとえば、言動の受け手が正当な理由なく遅刻を繰り返すなど受け手に問題がある状況下で指導のために発せられた言葉なのか、受け手が真面目に業務に従事するなかで発せられた言葉なのかなどによって、パワハラかどうかの判断が異なる場合もあるでしょう。

 

3.業種や業態、業務の内容、性質

従事している業種や業態なども、ある言動がパワハラかどうかの判断材料となり得ます。

 

たとえば、営業部の部長職など管理職に就いていた人を退職に追い込む目的で、いままで従事していた仕事とはまったく異なる業務に従事させることはパワハラに該当するとされる可能性があるでしょう。

 

4.言動の態様、頻度、継続性

言動の態様や頻度、継続性なども、パワハラかどうかの判断材料となります。たとえば、叱責の際に1度暴言を浴びせた程度であるのか、毎日のように繰り返し暴言を浴びせていたのかなどです。

 

5.労働者の属性や心身の状況

同じ言動であったとしても、労働者の属性や心身の状況によってパワハラかどうかの判断が分かれる場合があります。

 

たとえば、通常の労働者にとっては一般的な業務量であったとしても、精神疾患による休暇明けである労働者に同様の業務量を課した場合にはパワハラだと判断される可能性があります

※ 厚生労働省 あかるい職場応援団:「教員の精神疾患が増悪し自殺したのは、校長らのパワーハラスメントが原因であるとして損害賠償を請求した事件」 ― 損害賠償請求事件」

 

6.行為者との関係性

1つの言動のみを切り取ってパワハラかどうかが判断されるわけではなく、行為者と言動の受け手との日頃の関係性も、パワハラかどうかの判断材料となります。

パワハラかどうかは誰が判断する?

では、ある言動がパワハラに該当するかどうかは、なにを基準に誰が判断するのでしょうか?

 

判断基準は「平均的な労働者」の感じ方

その言動がパワハラに該当するかどうかは、「平均的な労働者の感じ方」を基準に判断されるとしています

※ 厚生労働省あかるい職場応援団:「ハラスメント基本情報」ハラスメントの定義

 

つまり、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業するうえで看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当とされます。

 

その言動を受けた人が主観的にパワハラだと感じたからといって、そのことのみをもってパワハラになるわけではなく、客観的な基準に基づいて判断されます。

 

最終的には「裁判所」が判断

パワハラかどうかの判断について争いがある場合には、最終的には裁判所が判断することとなります。

 

通常は、ある言動がパワハラであるかどうかを決めてもらうためだけに裁判をするということではなく、パワハラを理由に被害者からなされた損害賠償請求が認められるかどうかや、加害者とされた者が受けた懲戒処分が妥当かどうかということなどが争点となり、その過程において対象となる言動がパワハラであるかどうか判断されることが多いでしょう。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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