(※画像はイメージです/PIXTA)

岸田首相は2023年1月23日、施政方針演説のなかで、「次元の異なる少子化対策」を実施する方針を表明しました。すでにこの1月から「出産・子育て応援給付金」の給付、4月から出産育児一時金の増額が決まっており、それに加えてどのような「少子化対策」が講じられるのか、注目されます。本記事では現時点での政府による子育て支援策の概要と、今後の課題について解説します。

政府の「少子化対策」に欠けてきた視点と今後の課題

また、以下の課題が古くから指摘され続けています。

 

・育児と仕事を両立できる環境の整備の立ち遅れ

・増大する教育費の負担

 

◆育児と仕事を両立できる環境の整備の立ち遅れ

まず、育児と仕事を両立できる環境の整備が明らかに立ち遅れています。

 

すなわち、「女性の社会進出」と「実質所得の減少」とがあいまって、共働き世帯が多数となっています。

 

育児と仕事を無理なく両立できる環境を整えない限り、夫婦が世帯の生活を維持するのが精いっぱいで、子どもをもつ気になれないのは理解できます。

 

ところが、「男は仕事・女は家庭」という考え方は時代遅れになりつつありますが、それでも、今なお育児の負担はもっぱら女性に集中する傾向があります。女性が育児のためキャリアアップを諦めたり、男性の育児休業の取得に勤務先が難色を示したり、子どもが急病になったなどでやむを得ず退勤せざるを得なくなった母親が申し訳なさそうにふるまわなければならなかったりといった事態は、なかなか改善が進んでいません。

 

なお、この点については、日本社会の封建制というよりも、男尊女卑の気風を一部に色濃く残す自民党が与党の多数派を占めていることが影響している可能性があります。

 

◆増大する教育費の負担

次に、実質所得が減少しているにもかかわらず、教育費の負担が高騰し続けていることです。

 

日本経済は長期にわたり低迷し、国民の実質所得は減少しています。そこに、消費税等の増税と物価高、および、いわゆる「老後2,000万円問題」に象徴される年金不安・老後不安という逆境が、子育て世代を襲っています。

 

ところが、教育費は高騰の一途をたどっています。

 

私立大学の授業料の平均値は、2001年(平成13年)に年間799,973円だったのが、2021年(令和3年)には年間930,943円となっています(文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査」の結果によれば)。

 

子育て世代の負担軽減の対策を打たなければ、子どもの学ぼうとする意欲を阻害し、国としても有為な人材を育成する機会を損なうことになります。

 

しかも、いわゆる「就職氷河期世代」以降の人々のなかには、社会に出てから十分な収入を得ることができず、奨学金の返済に苦しむ人々等もいます。

 

岸田首相は施政方針演説において「次元の異なる少子化対策」を提唱しています。しかし、これまでも政府・与党は「少子化対策」が重要であると強調しながら、上述した問題点を放置してきたに等しいといえます。また、昨今の、妊娠・出産および子育て初期に対する給付の拡充も、問題の核心を正面からとらえたものとはいい難いものがあります。

 

政府・国会は、今度こそ、子育て初期に対するサポートに偏重することなく、また、古色蒼然とした男尊女卑の気風と完全に決別し、労働者が無理なく育児と仕事を両立できる環境の整備、「児童手当」の所得制限の撤廃等の拡充、高等教育にかかる費用の負担軽減に取り組むことが求められます。

 

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