(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、需要が高まるなかでもなかなか供給が追いつかないのにはワケがあると、ねりま西クリニックの大城堅一院長はいいます。医療業界が抱える課題について、大城院長が解説します。

在宅医療のガイドライン等はなく、現場の医師任せ

また在宅医療ではたとえ患者が同じ疾患・健康状態であっても、診療内容そのものがクリニックや医師によって異なることが多々あります。

 

病院の医療であれば、医師が10人いたら全員が同じゴールを目指して治療をします。患者の状態に応じて検査から治療法に至るまで、診療ガイドラインが詳細に決められており、それに従って治療を進めていくからです。

 

しかし、在宅医療ではどこを目指すのかという共通のゴールもなければ、治療方針についても決まりがありません。在宅医療の進め方を示すガイドラインの類はなく、医師が患者や家族の希望を踏まえ、すべて個々に判断しています。

 

例えば在宅医療における医学的管理には、在宅酸素療法、人工呼吸器管理、気管切開、中心静脈栄養、胃ろう、経管栄養、導尿、褥そう等の難治性皮膚疾患管理、がん終末期の疼痛管理などがあります[図表2]。これについても何にどのくらい対応しているかはクリニックによって違います。

 

日本医師会総合政策研究機構「第2回診療所の在宅医療機能調査(2017年10月)」より作成
[図表2]医学的管理の対応状況 日本医師会総合政策研究機構「第2回診療所の在宅医療機能調査(2017年10月)」より作成

 

対応に差が生まれる理由は、医師の診療技術の違いだけではありません。日常の管理をする訪問看護師を確保できるかどうかという人員の問題もありますし、クリニックで使用できる検査機器・医療機器の違いもあります。

 

外来を中心とする小規模クリニックは、在宅で使用できる検査機器等も限られることが多く、必要な検査を行えないケースや検査のためだけに連携病院に入院しなければならないこともあります。

 

その場合、患者の状態によっては自宅と病院とを頻繁に行き来することになり、患者の生活の質(QOL)は低下してしまいます。

 

 

大城 堅一

医療法人社団星の砂 理事長

ねりま西クリニック 院長

 

※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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