(※写真はイメージです/PIXTA)

「人生100年時代」を体と心の健康を保ち、上機嫌で生きていくためには70代、80代の高齢期にあっても、「体と心を動かし続けること」だといいます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

脳に刺激を与えることが老化予防になる

■思秋期の脳への刺激が老化予防になる

 

子供と大人の間の時期の「思春期」になぞらえて、中年期と高齢期の間の時期を私はしばしば「思秋期」と呼んでいます。いわゆる更年期障害が起こる時期です。

 

更年期障害が起こるのは、女性は閉経を挟んだ前後5年間とされています。男性なら40代後半から70代までと個人差がかなりありますが、思秋期も50代後半〜70歳ぐらいまでが対象です。

 

思秋期については次の3つのポイントを頭に入れておくべきでしょう。

 

1つ目のポイントです。思春期は、自分のアイデンティティを決める時期です。

 

職業を選択し、どんな人間になろうかとか。しかし、一般論から言うと、日本では特に大学を決めるときに、ある程度将来が決まってしまうから、他の国に比べて悩む時間が短いのです。その思春期が長いと、定職に就かない期間が長くなり、独り立ちが遅れることになるので、望ましいと言えない面もたくさんあります。

 

一方、思秋期は、高齢期になるまでの期間が長いほうが老人になるのが遅れるというわけで、長いほうが望ましいとも言えます。

 

次に2つ目のポイントです。これは生物学的なことですが、じつは人間は思春期までは染色体的には男女に分かれていますが、ホルモン的にはほぼ中性です。

 

だから、男女ともに子供をつくることはできません。思春期に女性は女性ホルモンがドッと出て、男性は男性ホルモンがドッと出てきますから、いわゆる男女に分かれます。

 

思秋期はまさに真逆の時期です。男性は男性ホルモンが減り、女性は女性ホルモンが減り、高齢期にはともに中性化し、性的存在ではなくなっていきます。ただ、脳での感覚が残っていますから、男性の「下半身の元気」などに影響がない場合もあります。

 

3つ目のポイントです。私が「更年期」を「思秋期」と呼ぼうという意味には、「もうちょっと考える時期にしましょう」ということがあります。思春期のときに必死になって将来どんな人間になりたいかと、ものすごく悩み、苦しみ、考えたはずです。

 

だとすれば、思秋期にも、セカンドライフを生きるにあたり、再就職の悩みだけでなく、「どんな老人になりたいか」「どういう自分でありたいか」をあらためて考えてみませんかと提案したいのです。

 

人生を考える最後のチャンスともいえる、思秋期に脳をフル活動させること、脳に刺激を与えることは、間違いなく老化予防にもなるのです。

 

■70代以降の生活のクオリティは「助走」で決まる

 

一般的に思秋期にあたる50代後半は、仕事においてもプライベートにおいても充実した時期といってもいいでしょう。

 

仕事においては、積み上げてきた成果によってそれなりの地位も得られているでしょうし、さまざまな困難なシチュエーションを乗り越えてきた経験から、ビジネスチャンスを成功させるスキルはもちろん、危機管理のノウハウも身についているでしょう。

 

プライベートにおいても同様です。既婚者なら大過なく家庭生活を送り、独身なら独身としてそれなりの生活基盤を築き、一定の成功を収めている人は少なくないでしょう。

 

しかし、油断は大敵です。努力を怠ってしまうと、この世代は、体力の低下はもちろんのこと、新しいもの、新しい情報への感度や理解力は衰えてくることになります。その結果、ものごと全般に対して柔軟な理解をしたり、対応したりする能力も衰えてきます。

 

それでも、仕事において目指すセカンドステージがいまのステージの延長線上にあるような場合なら、それなりに失敗を回避することは可能かもしれません。たとえば、定年後、いまの会社の系列会社で働くとか、公務員が天下るといったケースです。

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※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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