(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2023年1月20日に公開したレポートを転載したものです。

日本の物価上昇はこの先も続くのか?

今朝発表された2022年12月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で4.0%上昇した。オイルショックの1981年12月以来、41年ぶりと大きく報道された。

 

実際の物価が上がれば期待インフレ率も上昇し、名目金利上昇につながるという経路もあるだろう。しかし、足元の金利上昇は、少し違う背景があるのではないか。こういう論法だろう。すなわち、日本でも物価高が起きている。そんな状況で日銀がいつまでも金融緩和を続けるのはケシカラン。いずれ緩和の修正に動かざるを得ない。それを見越して国債が売られているという側面が強いように思う。

 

では金利上昇の起点となっている日本の物価上昇はこの先もまだ続くのだろうか。日銀は先般、2022年度の物価見通しを引き上げたが、実は2023年度の物価見通しについては10月時点の見通しを変えていない。日銀の展望レポート「物価の中心的な見通し」には、以下のように記されている。

 

「物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなったあと、そうした影響の減衰に加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。」

 

前回記事(1月13日付『日本株の冴えない展開は「いまが堪えどき」』でも書いたが、日本のインフレはディマンド・プルの要因がほぼない。展望レポートが述べているとおり、輸入物価の上昇、すなわち原油など資源価格の上昇と円安が招いたコスト・プッシュの要因がほとんどである。で、この先を展望すれば、すでに原油価格は大幅に下落し、為替も円高に巻き戻っている。この先は日銀の見通しのように「プラス幅を縮小していくと予想」するのが妥当だろう。

 

そうなれば、日銀に緩和策の修正を求める声もトーンダウンするだろう。このまま年後半まで引っ張れば、現状の政策を変更しなくても、インフレ圧力の緩和でイールドカーブが自然と正常化するかもしれない。

 

「賃上げ」の流れに乗れ…日銀は「金融緩和」続行か

なによりも、黒田総裁が繰り返すとおり、前回の日銀の政策修正は「実質利上げ」などではまったくない。日本は政府や経済団体がそろって企業に賃上げを要請している状況だ。いや、国中が、ようやく高まってきた物価上昇を受け入れる機運に乗じて、ここで賃金上昇の流れにまで持っていこうというムードが高まっている。

 

それに水を差すような利上げ=金融引き締めを日銀が断行するわけがない。米国のように構造的な人手不足から賃金インフレがサービス価格を押し上げるような状況が懸念されるインフレとはまるで違う。だから利上げで景気を失速させてもインフレ抑制にはならない。

 

株式市場もそのことを少しずつ理解し始めて、落ち着きを取り戻しつつあるようだ。日経平均は大きく下げたがTOPIXの下値はそれほど深くない。TOPIXの戻りは、すでに前月の日銀修正サプライズで急落する前の水準にだいぶ近づいている。

 

出所:Bloomberg
[図表2]日経平均株価(青)とTOPIX(白) 出所:Bloomberg

 

日本はいま「賃金上げよう」の大合唱だ。日銀の金融緩和はそれを支援する。緩和策をなにがなんでも維持するというのは、日銀の決意表明である。むしろ、潔いではないか。がんばれ、日銀!

 

 

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

 

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