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帳簿に記載されていない債務である「簿外債務」。どのようなものが簿外債務となるのか、買い手・売り手はどのような対策をすべきか、みていきます。

M&A…買い手が取る対策

買収した会社に簿外債務が発覚すると、M&Aの手法によっては買い手が簿外債務ごと引き受けなければいけない可能性もあります。簿外債務に対して、買い手はどのような対策ができるのでしょうか?

デューデリジェンスの実施

簿外債務のリスクを抑えるために買い手ができる対策として、入念な『デューデリジェンス』の実施が挙げられます。資料やヒアリングによる調査の実施により、事前に簿外債務が見つかるかもしれません。

 

この時点で簿外債務が見つかった場合、買収価格の引き下げや最終契約書への条項の追記などによる対策が可能です。またM&Aのスキームを『事業譲渡』へ変更すれば、簿外債務を引き継がずに買収を実施できます。

 

◆訴訟リスクは把握しきれないことも

デューデリジェンスを実施しても『訴訟リスク』の把握は難しいでしょう。例えば取引先とのトラブルについては、ヒアリングで話が出てこなければ買い手には調べようがありません。

 

しかし、そのままでは買収後に損害賠償請求が行われる可能性があるでしょう。経営者はもちろん、従業員へもヒアリングを実施し、訴訟や係争事件に発展しそうなトラブルがないか確認が必要です。

契約書に表明保証を記載してリスク回避

契約書へ『表明保証』を記載するのも、リスクを回避する方法です。どれだけ念入りにデューデリジェンスを行ったとしても、簿外債務を見逃す可能性はあります。

 

そこで、開示された情報が正しくうそのないものであることを、表明保証により売り手に約束してもらうのが有効です。後からうそが発覚した場合には、損害賠償請求や契約解除を求められる内容で作成します。表明保証があれば、後から簿外債務があると分かったとき、売り手の責任を追及できます。

M&A…売り手が取る対策

売り手も簿外債務についての対策が必要です。そもそも会社の状況を正確に把握できておらず、簿外債務の有無を知らないケースもあるでしょう。もし簿外債務があると把握しているなら、できるだけ早い段階で買い手へ伝えた方がよいでしょう。

簿外債務の把握

会計書類の作成には専門的な知識が必要なため、簿外債務があると経営者が認識していないケースもあります。そのため専門家へ依頼し、調査してもらうとよいでしょう。隠しているつもりがなかったとしても、後から発覚すれば買い手に不信感を抱かれてしまいかねません。スムーズに交渉が進まなくなる事態や、交渉決裂の可能性もあるでしょう。M&Aを実施すると決まった段階で、簿外債務の有無を洗い出しておくと安心です。

簿外債務の開示

調査の結果、簿外債務が見つかったなら、買い手へ『開示』しましょう。もし、契約を結ぶまでばれなければ、価格交渉で価格を引き下げられず、希望通りに売却できるかもしれません。

 

しかしM&Aの契約時には、表明保証の条項を設定する場合がほとんどです。隠していた簿外債務が後から発覚すれば、損害賠償請求を求められる可能性があり、契約自体がなかったことになる可能性もあります。

 

また契約に至る前に隠していることがばれた場合は、買い手との関係性が悪化し、スムーズな交渉ができなくなってしまうでしょう。信頼の構築のためにも、早めの情報開示が必要です。

売り手は誠意を見せることが重要

帳簿に記載されていない債務を簿外債務といいます。ある条件がそろったときに発生するけれど、その可能性が現時点ではそれほど高くなく、金額もあいまいな場合には偶発債務といい、そもそも計上できません。将来の支出がほぼ確定している場合は引当金として計上します。しかし税制面でメリットがなく計上されないケースもあることが、簿外債務が生まれる原因です。

 

M&Aの実施時には、買い手・売り手双方とも簿外債務の対策を行いましょう。買い手はデューデリジェンスや契約書への表明保証条項の記載が、売り手は事前の調査や早めの情報開示が重要です。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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