(※写真はイメージです/PIXTA)

がんは日本人の2人に1人が経験する病気です。検査や治療法の進歩により、早期に発見できれば治るがんも多くなっています。早期発見が何より重要です。産業医の富田崇由氏がコストゼロからできる健康経営について解説します。

女性のがん検診受診率が低い理由

・がん検診

 

がんは日本人の2人に1人が経験する病気です。検査や治療法の進歩により、早期に発見できれば治るがんも多くなっており、早期発見が何より重要です。

 

現在、国が推奨しているがん検診は、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5種類です。このうち肺がん検診としても認められている胸部X線検査・喀痰検査は職場の定期健診で受けられますが、それ以外は定期健診のオプションで追加するか、個別にがん検診を受けることになります。それぞれのがん検診の検査項目や対象は、下の図表のとおりです。

 

国や健康保険組合でもがん検診の費用補助を行っているほか、自治体でも無料がん検診を実施しているところが多数あります。そうした支援や公的サービスは、社員の健康管理に役立てることができます。

 

 

■性別や働き方でも、がん検診の受診率に差がある

 

がん検診の受診率は欧米各国に比べると日本はまだ低い水準にあります。

 

国のがん対策推進基本計画(2018年、第3期)では、がん検診受診率50%以上を達成することが目標の一つに掲げられています。胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんという5つのがん検診のうち、コロナ禍前の2019年時点でこれを達成できていたのは男性の胃がん検診(54.2%)と、同じく男性の肺がん検診(53.4%)のみです。

 

それに対して女性の受診率は、最小の胃がん(37.1%)から最高の乳がん(47.4%)まで、いずれも50%を下回っています。

 

この理由には男性と女性の社会的地位や働き方の違いが関係していることも考えられます。男性は相対的に正社員の割合が多く職場の定期健診のオプションなどでがん検診を受ける機会が多い可能性があります。

 

一方の女性は、パートやアルバイトなどの働き方が多く職場でのがん検診の機会が限られているのかもしれません。特に乳がん検診と子宮頸がん検診は、欧米では70~80%台の検診受診率の国も多いことから、日本の受診率の低さが際立っています。こうした性別や働き方による検診受診の機会の不平等などは、従業員50人以上と50人未満の格差と同様に、今後さらに是正をしていかなければならない問題です。

 

がん検診の受診率が上がらない理由のもう一つには、がん検診の検査自体が痛い、恥ずかしい、怖いなどの不快な気持ちを伴うことがあります。

 

現在のがん検診のなかには臓器の細胞を採取するなど、体に負担をかけるものがあるのも事実です。検査というのは精度を上げようと思うほど体を傷つけたり受診する人に負担をかけたりする侵襲的なものになりがちです。

 

そこで、多くの人にもっと気軽にがん検診を受けてもらうためにより負担の少ない検査法の開発が世界的に進められています。最近では尿一滴だけ、あるいは唾液だけで一定の精度でがんの有無を調べられる新しいがん検診も登場しています。

 

こうした最新のがん検診は現時点では実施できる医療機関が限られていますし、検診としての精度や検査後の医療機関との連携などに課題があるものもあります。

 

それでも新しい非侵襲的な検査法が開発されて身体的・心理的・経済的にがん検診のハードルが下がれば、現代日本の国民病となっているがんの予防・発見が大きく進むことは間違いありません。新たなテクノロジーによってすべてのがんが早期発見できるようになる日を私も楽しみにしています。

 

富田 崇由

セイルズ産業医事務所

 

 

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※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

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