(写真はイメージです/PIXTA)

一部の相続人への最低限度の相続分が保証される「遺留分」。仮に遺言があったとしても「遺留分」を無視することはできません。本記事では、遺言により兄が全額の遺産を相続しようとしたケースを中心に「遺留分」について、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

請求できる遺留分の金額を計算する方法

それでは、実際に請求できる遺留分金額は、どのように算出するのでしょうか(2019年7月1日以降に生じた相続の場合、「遺留分」請求は金銭での請求となります。以下、2019年7月1日以降に生じた相続であることを前提に解説いたします)。遺留分の金額を算出するには、まず、被相続人の全体の財産額を計算し(ステップ1)、遺留分を請求する人の遺留分金額を計算します(ステップ2)。

 

ステップ1:「遺留分の基礎となる財産額」を計算する

[図表6]「遺留分の基礎となる財産」の計算式

 

(④については、2019年6月30日までに生じた相続の場合は、「特別受益」に該当すれば、10年という期間制限はありません)

 

※「特別受益」とは、相続人間の公平を図るため、被相続人から生前贈与などの特別な受益を受けた相続人がいる場合、当該受益を相続分の前渡しとして、相続分の算定をする制度です。 被相続人が相続発生時に所有していた財産だけではなく、①~④の生前贈与等の財産も計算に入りますので注意しましょう。

 

①~④や債務については、法的判断も必要となりますので、基礎となる財産を正確に知りたい場合は、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

 

ステップ2:遺留分の金額を計算する

[図表7]「遺留分の金額」の計算式

 

※「相続分の金額」の計算式における「特別受益」には、期間制限はありませんので、ご注意ください。

 

遺留分金額の計算の例

■ケース1:遺言により長男が遺産1,000万円を全額相続、次男が請求できる金額は?

 

[図表8]ケース1

 

・被相続人父、相続人長男、同次男

・被相続人の遺産:1,000万円

・被相続人から相続人等への生前贈与:なし

 

被相続人は、長男に全部相続させる遺言をのこしていました。

 

①基礎となる財産:1,000万円

②遺留分の金額:次男の遺留分割合1/2×1/2=1/4

 

この場合、次男が請求できる遺留分の金額は、1,000万円×1/4=250万円(次男が請求できる遺留分金額)となります。

 

■ケース2:長女・次女それぞれ生前贈与を受けており、遺言により長女が遺産2,000万円を相続、次女が請求できる金額は?

 

[図表9]ケース2

 

・被相続人父、相続人長女、同次女

・被相続人の遺産:2,000万円

・被相続人から相続人等への生前贈与:5年前に長女に対して1,000万円(特別受益)、15年前に次女に対して500万円(特別受益)

 

※なお、次女への特別受益は、「②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与」に該当しないものとします

 

被相続人は、長女に全部相続させる遺言をのこしていました。

 

①基礎となる財産:2,000万円+1,000万円(長女への特別受益)=3,000万円

②遺留分の金額:次女の遺留分割合1/2×1/2=1/4

 

次女が請求できる遺留分の金額は、3,000万円×1/4-500万円(次女への特別受益)=250万円(次女が請求できる遺留分金額)となります。

 

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