
1990年代に製造業ではゲームチェンジが起きましたが、日本企業はこれに対応しきれず、競争に大敗しました。2020年代に再び新たなゲームチェンジが起ころうとしていますが、日本企業が再起するにはどうすべきなのでしょうか? 東京大学未来ビジョン研究センターの客員研究員・小川紘一氏が解説します。
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オープン&クローズ戦略とは?
オープン&クローズ戦略とは、製品やシステムあるいはサービスを、「他社に公開するオープン領域」と「秘匿して利益の源泉にするクローズ領域」とにわけ、2つがエコシステムとして共存する仕組みを作る戦略思想のことである。当戦略は需要と供給の同時拡大を可能にし、2020年代にはサイバー空間とフィジカル空間を跨ぐ産業システムの全域へ広がるであろう。
最近ではこれがさらに拡張され、互いにつながる企業が刺激し合って成長する共生型エコシステムの設計フレームワークとして使われるようになった。デジタル化が進んでオープン・アーキテクチャーへ転換する産業システムのなかで、市場拡大(需要)と生産拡大(供給)を同時実現させる仕組みの設計思想となったのである。
オープン&クローズ戦略が需要と供給の同時拡大を可能にする背景として3つの理由が挙げられる。
・第一に、それぞれの企業がつながって互いに刺激し合えばネットワーク効果が生まれ、市場が拡大するからである。
・第二に、企業あるいは国がそれぞれ得意とする専門領域に特化してイノベーションを起こすだけで生産性が高まり、しかもこれがネットワーク効果によって増幅されるからである。
・第三に、たとえ個々の企業や国の投資が少なくても、エコシステム全体としてなら巨額投資となり、規模の経済と範囲の経済によって収益も生産性もさらに増大するからである。
このような経済効果に着目した人々が、オープン・アーキテクチャーへ転換したすべての産業にオープン&クローズ戦略を取り込み始めた。現在ではソフトウェアやデータ、ネット通販、クラウドはもとより、インダストリー4.0(※1)のような国家プロジェクトへも広がる。オープン&クローズ戦略は2020年代にはサイバー空間とフィジカル空間を跨ぐ産業システム(Cyber Physical System)(※2)の全域へ広がるであろう。
※1:製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す昨今の技術的コンセプト。もともとはドイツ政府が産官学連携で進めた国家プロジェクトで第4次産業革命とも呼ばれる。Cyber Physical System、モノのインターネット、クラウドコンピューティング、コグニティブコンピューティングなどが含まれる。
※2:実世界に対するセンシング(データ)とコンピューティング(計算、意味理解)、それに基づくアクチュエーション(制御、フィードバック)を基本要素として、実世界(人、モノ、環境)とICTが密に結合・協働する相互連関の仕組み。
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