(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になったら、足りない栄養を足す、不足しがちな運動を足す、枯渇している性ホルモンを足す、娯楽や楽しみを足すなど、体と心が元気になることを足していくことが若さと活力の維持につながります。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術』(マキノ出版)で解説します。

70代から引き算医療を見直すことが大切

■「足し算」健康術で足りないものを足して元気になる

 

この連載のテーマである「足し算」健康術は、まさに「足す」健康法です。

 

高齢になったら、足りない栄養をしっかり食べて足す、不足しがちな運動を足す、枯渇している性ホルモンを足す、娯楽や楽しみを足すなど、体と心が元気になることを足していくことが若さと活力の維持につながります。

 

高齢者の健康維持や増進には足し算が不可欠。そう私が考えるようになったのは、6000人以上の高齢者の診察を通して、

 

①年をとったら「余る害」より「足りない害」のほうが大きい、
②余っているほうが、足りないよりずっといい、

 

ということを学んだからです。

 

「余る害」「足りない害」とはどういうことか。コレステロール値を例に説明しましょう。

 

コレステロールは動脈硬化を引き起こすことから、コレステロール値が高い=動脈硬化になる(余る害)が問題視されます。

 

しかし、コレステロールは細胞膜やホルモンを作る大切な材料でもあります。不足する(足りない)ことで細胞の再生がとどこおったり、老化が進んだり、免疫機能が低下したりします(足りない害)。

 

「余っている害」と「足りない害」を天秤にかけると、体の老化が始まっている高齢者では、足りない害のほうがはるかに大きいといえます。高齢者がシャキッと元気に過ごすためには、コレステロールに限らず、血圧や血糖値も、薬で無理に下げすぎないことが肝腎です。

 

後述しますが、「足し算」健康術には、今より元気になるヒントがつまっています。血糖値やコレステロールを気にせず、食べたいものを食べ、年だからと我慢せず好きなことをやる。「足し算」健康術を実践すれば、免疫力アップにもつながります。

 

■余っているものを引く「引き算医療」は高齢者の体調を悪くする

 

高齢者を元気にする「足し算」にたいして、高齢者から活力を奪うのが、余っているものを引く「引き算医療」です。

 

たとえば、健康診断で血圧や血糖値、コレステロール値に異常が出ると「高いですね。正常値まで下げましょう」と薬による治療が行われます。これなど代表的な引き算医療です。

 

そのほか、適正体重になるまで減量をすすめられたり、塩分を控えるよう指導されたり。健診後にこうした引き算医療を経験している人は多いのではないでしょうか。
 


40~50代の中年世代までなら、検査数値の「異常値」を「正常値」に戻すことで、病気の予防や改善に役立つかもしれません。生活習慣など改善すべき点があれば引き算して改善すればいいと思います。

 

一方、高齢者の場合、引き算は害になることが多いのです。

 

高齢者のほとんどは健診を受けると、血圧や血糖値などでいくつも異常が出ます。そうなると異常値を正常値に戻すために、モグラ叩きのように複数の薬が処方されます。

 

若い頃と比べて高齢者は肝臓や腎臓の機能が落ちるぶん、薬が体内で作用する時間が長くなります。薬を飲み続けることで頭がボーッとしたり、だるくなったりするなど、かえって体調が悪くなってしまいます。


 
80歳を元気に迎えるには、70代から引き算医療を見直すことが大切です。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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※本連載は和田秀樹氏の著書『シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術』(マキノ出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術

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