(写真はイメージです/PIXTA)

社内でパワハラが発生した際、従業員が「会社は信用できない」などの理由から労基署へ通報した場合、企業はどうすればよいのでしょうか。今回は、パワハラ相談に対する労基署の対応や、従業員が労基署へ駆けこむ前・後にそれぞれ企業ができる対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

ヒアリング、あっせん…労基署が介入できること

従業員がパワハラ問題について労基署へ相談した場合、労基署はパワハラに対してどこまで介入するのでしょうか?

 

なお、先に説明したとおり、労基署が直接パワハラの相談を受け付けているわけではありませんので、ここでは、都道府県の労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」に相談した場合における一般的なケースをもとに解説します。

 

社内解決が可能かどうか相談者へヒアリングする

総合労働相談コーナーでパワハラについて相談した場合には、まず社内での解決が可能そうかどうか、相談者へヒアリングがなされます。

 

ヒアリングされる内容は、受けたパワハラの内容や受けた損害のほか、会社へ相談したかどうかといったことや、会社がどのように対応をしたのかといったことなどです。

 

状況によっては、ヒアリングした内容について、労基署から会社へ問い合わせが入る場合もあります。

 

あっせんや助言・指導の利用を案内する

ヒアリングの結果、当事者同士のみでの解決が難しいと判断された場合には、紛争調整委員会によるあっせんや労働局長による助言・指導制度などの利用が案内されます。

 

それぞれの内容は、次のとおりです。

 

紛争調整委員会によるあっせん:都道府県の労働委員会が双方の意見を聞き、話し合いを仲裁する手続き※1

 

労働局長による助言・指導:都道府県労働局長が労働紛争の問題点を指摘して解決の方向を示すことにより、紛争当事者が自主的に紛争を解決することを促す制度※2

 

※1 中央労働委員会:あっせんの流れ
※2 埼玉労働局:労働局長による助言・指導制度

 

いずれも当事者同士で話し合って問題を解決する制度であり、労基署が強制的に指導をしたり、会社や加害者などへ罰則を科したりする制度ではありません。

 

また、あっせんや助言・指導の対象となる紛争の範囲は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争です。すなわち、すべての労働紛争が対象となるわけではなく、労働者同士の紛争などは対象ではありません。

 

労働基準法違反があれば是正指導をする

会社側に労働基準法違反があれば、労基署から会社に対して是正勧告がなされます。

 

たとえば、会社が残業代を支払っていない場合や、不当解雇があった場合、労災隠し(故意に労働者死傷病報告を提出しないことや虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること)があった場合などです。

 

慰謝料請求など民事への介入は「しない」

パワハラでは、加害者や会社に対する慰謝料請求が検討される場合が多いかと思います。
しかし、労基署は慰謝料請求など、民事の問題への介入はしません。

 

そのため、たとえば会社へ労基署から「慰謝料を支払うように」などと指導がされることはありません。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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