高精度な仮説を立てるためには材料を「集めて・使う」
前述したマーク小西さんの例のポイントは、研究室ではそれまでにトライ&エラーを繰り返していて、「フクロウは餌をいっぱい与えたら安心して繁殖を始めるのではないか」という精度の高い仮説を立てるだけの材料があったところです。
ちなみに仮説を立てるには「帰納法(きのうほう)」と「演繹法(えんえきほう)」があると僕たちは習いました。
帰納法とはたくさんの事象から共通点を導き出す思考法です。たとえばテレビに茂木健一郎が出ている、本屋に茂木健一郎の本がたくさんある、YouTubeでも茂木健一郎がリコメンドされる、だったら、茂木健一郎はいま、人気なのではないか? という仮説が立てられます。
一方の演繹法は足し合わせる、関連づけるなどで仮説を立てる方法です。たとえば「茂木健一郎は男だ」「多くの男は外出時にズボンを履いている」だから「茂木健一郎も外出時はズボンを履くだろう」という思考法です。
マーク小西さんのフクロウの繁殖は、「演繹法」的な思考で導かれた結果です。「野生のフクロウは餌が豊富な年に卵を多く生む」「ほかの研究室では餌をちょうど足りる程度にしか上げない」「そのほかの条件はほかの研究室と大差ない」だったら「餌をたくさんあげてみようか」となったのでしょう。
帰納法と演繹法、どちらで仮説を立てるにせよ、仮説の精度を高めるにはまずは情報をたくさん集めて、その中から取捨選択をするというステップは変わりません。情報量を増やしたり、情報を選んだりするためのトレーニングとして、最も手間いらずで道具も必要なく、効果が高いのは「ストーリーをつくってみる」ことです。
茂木 健一郎
理学博士/脳科学者
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