(写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナによるパンデミック、ウクライナ戦争、米中対立の激化などにより、世界経済の「急減速」が続いています。しかし、そのようななかで2023年の日本経済は先進国のなかでもっとも「底堅い」1年になるだろうと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は予測します。その理由と、2023年の世界経済見通しについて、武者氏が解説します。

許容変動幅拡大…懸念される日銀YCC政策の「帰着点」

「勝って終わるか」・「負けて終わるか」…YCC2つのシナリオ

日本経済ウォッチャーにおいて共有されている最大の懸念は、世界で唯一長期金利をコントロールしている日銀の超金融緩和政策YCCの帰趨である。YCCの終わり方に勝って終わるか負けて終わるかの2通りがある。

 

勝って終わるとは、日銀が所期の目的であるデフレ脱却と2%インフレの定着を実現した後、YCCを終える道であり、それは株高を伴う望ましい終焉である。

 

負けて終わるとは、デフレ脱却を果せずにYCCを終える道であり、長期金利の急騰、債券暴落、景気悪化と株安が同時に起きるので、景気後退のみならず金融危機を引き起こすかもしれない。それは日本が世界最大のクロスボーダーの貸し手であり、世界金利のアンカーである故に、容易に世界金融危機につながるかもしれない。

 

[図表5]日米英独の10年国債利回り
[図表5]日米英独の10年国債利回り

 

[図表6]日本国債投資主体別保有比率
[図表6]日本国債投資主体別保有比率

 

カギは円暴落があり得るかどうか、にかかっている。ジョージ・ソロス氏のポンド売り投機に襲われた1992年の英国は、為替を取る(=EMS欧州通貨制度加盟維持)か、国内景気優先の金融緩和維持を取るかの二律背反(ジレンマ)状況にあった。

 

いまの日本に当時の英国同様の弱みを嗅ぎ取った海外ヘッジファンドが、時折日本売りのチャレンジを試している。そのチャレンジが成功するかどうかは、日本政府・日銀の許容限度を超える円暴落が起きるかどうか次第であろう。

ドル安は100兆円レベルの巨大な利益を日本にもたらす

筆者は、タガを外れたような円の暴落はまったく考えられないし、日本に円安を止めなければならない理由もない、と判断している。

 

日本は世界最大のドル保有国なので、ドル高は日本の保有外貨資産の価値を大きく押し上げる。対外純資産は3.6兆ドルと世界最大、米国国債保有額も1.2兆ドルと世界最大であり、ドル高は100兆円規模の巨額の為替換算益をもたらす。それを利用することで企業投資、政府によるハイテク・グリーン投資、防衛支出の増強などの費用が賄える。

 

また企業の価格競争力は飛躍的に強まる。円安が進めば輸入物価が上昇するというマイナスはあるが、それは工場の国内回帰と国内製品の輸入代替を進めるので国内生産はより増加する。

 

[図表7]対外純資産残高推移トップ5ヵ国推移
[図表7]対外純資産残高推移トップ5ヵ国推移

 

[図表8]米国国債保有額トップ5ヵ国推移
[図表8]米国国債保有額トップ5ヵ国推移

 

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※本記事は、武者リサーチが2022年12月19日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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