(写真はイメージです/PIXTA)

欧州経済は、コロナ禍からの回復を着実に進める一方、ロシアがウクライナに侵攻して以降はエネルギーの供給懸念や価格高騰の影響を大きく受けています。はたして、2023年はどうなるのでしょうか。ニッセイ基礎研究所、伊藤さゆり氏と高山武士氏の分析です。

インフレ:インフレの持続性が高まっている

インフレ率は10月に10%超を記録、高い伸び率となっていることに加え、物価上昇の裾野が広がっている。また、雇用にひっ迫感があることから、その持続性も高まっている。

 

11月のHICP上昇率(速報値)は、総合指数で前年同月比10.0%、コア指数で5.0%となった。単月の伸び率では10月の10.6%から低下しており、また卸売ガス価格が夏のピークと比較して下落したことなどを受け、上流の物価指数の加速は止まっている(図表12)。ただし、伸び率は10%前後と高く、コア指数の伸び率も高止まりしている。

 

こうした状況下で、ユーロ圏の雇用が堅調であることから、賃金上昇を伴ってインフレが持続しやすい。ユーロ圏の雇用者数は7~9月期に前期比0.3%(4~6月期0.3%)と順調に増加し、コロナ禍前との比較では、雇用者数が1.9%(+310.5万人)とGDP並みに回復している(図表13)

 

【図表12】【図表13】
【図表12】【図表13】

 

また、失業率は10月に6.5%と統計データ公表以来の最低値を記録、労働参加率もコロナ禍前のトレンド付近まで回復している。

 

総労働時間では7~9月期は▲0.1%(0.6%)とわずかに減少し、雇用者が増える一方で1人当たりの労働時間が短縮された。景気の減速による労働需要の低下が寄与した可能性があるが、供給側の問題(労働者がコロナ禍前より短時間の労働を指向している)の可能性も考えられる。後者であれば、むしろ賃金上昇圧力が生まれやすい状況と言えるため、今後の動向が注目される。

 

7~9月期の妥結賃金上昇率は2.91%(4~6月期2.45%)となった(図表14)。妥結賃金の伸びはインフレ率と比較すれば低いが、歴史的には高めの伸び率が続いている。また、求人賃金がインフレ率を超える勢いで伸び率を高めている。総じて、賃金上昇圧力は強く*5、今後、インフレ率がピークアウトしても、インフレ率の低下スピードは緩慢になると見られる。

 

【図表14】
【図表14】

 

*5:ECBのレーン理事はひっ迫した労働市場では、求人賃金の伸びが既存雇用者の賃金上昇率を上回りやすく、先行指標として機能する可能性が高いことを指摘している。Philip R. Lane (2022), Inflation Diagnostics, 25 November 2022, THE ECB BLOG(22年12月9日アクセス)。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月16日に公開したレポートを転載したものです。

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