(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年12月23日に発表された政府の「2023年度税制改正大綱」において、「相続時精算課税制度」に年110万円の基礎控除が導入されることになりました。これにより、制度の使い勝手が向上することが期待されます。しかし他方で、問題視されていた「富裕層優遇」の実態は温存されることになりそうです。どういうことなのか、解説します。

「富裕層優遇・格差固定化」の点は温存される…

しかし、与党の税制改正大綱で指摘された上記の3点のうち、「3. 現行の生前贈与の非課税措置(暦年贈与等)は富裕層に有利で格差の固定化につながる」という点については、不十分といわざるをえません。

 

すなわち、従来、生前贈与には、富裕層が利用しやすい以下のような非課税措置が設けられています。

 

・教育資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・住宅資金贈与(1人あたり最大1,500万円)

・結婚・子育て資金贈与(1人あたり最大1,000万円)

・配偶者控除(最大2,000万円)

 

これらの非課税措置は、いずれも、一応、2年の「期限付き」でありつつも、期限を迎えるごとに更新が繰り返されてきたものです。

 

上述した「富裕層に有利であり格差の固定化につながる」という問題意識からすれば、これらは本来、廃止・縮小すべきものといえます。

 

ところが、政府の税制改正大綱においては、2023年3月31日に期限を迎える「教育資金贈与」(1人あたり最大1,500万円)と「結婚・子育て資金贈与」(1人あたり最大1,000万円)の非課税制度は、基本的な枠組みを維持して継続されることになりました。

 

他の特例についても、期限を迎えるごとに、多少のマイナーチェンジをしながら、更新・継続していく可能性が高いと考えられます。

 

すなわち、政府・与党は、「相続税と贈与税の一体化」を徹底させず、富裕層優遇・格差固定化につながる可能性がある制度を温存するという政策決定を行ったことになります。

 

背景として挙げられるのは、与党が富裕層を大きな支持基盤としており、富裕層に不利な税制改正に消極的であるということです。

 

相続時精算課税制度の拡充については、先述したように、高齢世代から若年世代への資産移転を促す効果がある程度見込まれると考えられ、一定の評価ができるものといえます。

 

しかし、気になるのは、政府・与党が、富裕層を優遇し格差固定につながる生前贈与の非課税特例を温存する一方で、消費税のインボイス制度や所得税(復興特別所得税)・法人税のいわゆる「防衛増税」、自動車関連税制といった一般国民を広く対象とする税制については「取れるところから取る」という安直な発想で課税強化に邁進するかのような動きを見せていることです。

 

私たち国民は、税制のあり方について、公平性・公正性、法秩序の統一性、担税力(顕著な苦痛を感じることなく税を負担する能力)といった諸原則に則ったものになっているか、たえず監視していく必要があります。

 

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