(※写真はイメージです/PIXTA)

令和3年版高齢社会白書(全体版)によると、日本の高齢化率は28.8%、2036年には33.3%まで上昇する見込みです(令和2年10月1日時点)。こうしたなか、医療費、社会保障費の増加が国の財政を圧迫していることもあり、医療費や病床削減の受け皿として「在宅医療」に期待が寄せられています。しかし、ねりま西クリニックの大城堅一院長によると、在宅医療の普及は現状一向に進んでいないといいます。それはなぜか、みていきましょう。

在支診増加を阻む「24時間対応」の壁

在支診を増やすにあたり、最大の障壁となっているのが、在支診の設置基準にある「24時間」の対応です。

 

クリニックが在支診として在宅医療をするには国への届け出が必要です。届け出をしなくても訪問診療などを行うことはできますが、届け出をすることで診療報酬の加算が請求できるなど、経営的にも安定して在宅医療を提供できます。

 

ただし在支診の届け出をするには、次のような要件を満たさなければなりません。

 

[在宅療養支援診療所の施設基準]

 

・患者や家族から24時間連絡を受けられる体制を確保する

・患者の求めに応じて24時間往診が可能な体制を確保する

・担当医師の指示に基づき24時間訪問看護のできる体制を維持する

・緊急時に連携保険医療機関に検査・入院時のベッドを確保する

・連携する医療機関等への情報提供を行う

・年に1回、看取り数等を地方厚生(支)局長へ報告する

 

高齢者や要介護の人は、ちょっとした環境の変化で急に状態が悪化することがあります。夜間や休日も含めて24時間連絡が取れる体制があることは、患者や家族が自宅で安心して療養するためには不可欠な条件です。

 

しかし、これは在宅医にとっては1日24時間、夜間も休日もなく、電話が鳴れば対応をしなければならないことを意味します。この24時間対応が難しいために、在支診として届け出をしない、できないクリニックは少なくないのです。

 

ちなみに私のクリニックのような「機能強化型在宅療養支援診療所」では、在支診の基準に加え、さらに以下の基準を満たす必要があります。

 

[機能強化型在宅療養支援診療所(単独型)の施設基準]

 

・在宅医療を担当する常勤の医師が3人以上

・過去1年間の緊急往診の実績が10件以上

・過去1年間の看取りの実績、または超・準超重症児の医学管理の実績いずれかが4件以上

 

[機能強化型在宅療養支援診療所(連携型)の施設基準]

 

・在宅医療を担当する常勤の医師が連携内で3人以上

・過去1年間の緊急往診の実績が連携内で10件以上、各医療機関で4件以上

・過去1年間の看取りの実績が連携内で4件以上、かつ各医療機関において看取りの実績または超・準超重症児の医学管理の実績いずれかが2件以上

 

 

大城 堅一

医療法人社団 星の砂/ねりま西クリニック

理事長/院長

 

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※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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