(写真はイメージです/PIXTA)

経営上の都合で人員整理をしたい場合や、遅刻やトラブルが多い社員を辞めさせたい場合など、ときに企業側が従業員に対し退職を促したい場合があるでしょう。しかしその際、いくつかのポイントに注意しないと「退職強要」にあたり、損害賠償請求をされてしまう可能性があると、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。社員に「納得して辞めてもらう」ためにはどうすれば良いのでしょうか、みていきます。

退職勧奨のメリットは「訴訟リスク」の低減

会社が退職勧奨をする目的やメリットは、次のとおりです。

 

会社が退職勧奨をする主な目的は、会社の方向性と合わない従業員や業績が芳しくない従業員に、円満に退社してもらうことです。また、会社の業績が低迷しており、従業員の数を減らす目的で退職勧奨をする場合もあります。

 

先ほど解説したように、退職勧奨による退職は、原則として自己都合退職ではなく会社都合退職です。

 

では、自己都合退職扱いにできないにもかかわらず、会社はなぜ退職勧奨をするのでしょうか?

 

退職勧奨をする最大のメリットは、解雇を回避することができる点です。

 

仮に「業績が芳しくない」、「会社の風土と合わない」といった理由で解雇をしてしまうと、解雇予告手当の支払いなどが必要となります。また、相手から解雇無効や損害賠償を求める訴訟が提起される可能性が高いでしょう。

 

日本の労働法では、解雇のハードルが非常に高く設定されており、会社が非の少ない従業員を訴訟リスクなく解雇することは、容易ではありません。

 

一方で、退職勧奨で相手が退職に合意をしてくれれば、解雇というリスクを負うことなく、従業員に辞めてもらうことが可能となります。

 

助成金は死守したいが…勝手に自己都合扱いにした場合「損害賠償」の可能性

会社都合退職と自己都合退職には、先ほど解説した違いが存在します。なかでも、助成金の受給要件を満たさなくなることは、企業にとって死活問題であることが少なくありません。

 

そのため、企業としては、できるだけ会社都合退職ではなく、自己都合退職としたいことでしょう。

 

しかし、退職勧奨による退職を一方的に自己都合扱いとすることは絶対に避けるべきです。その理由は次のとおりです。

 

退職勧奨を自己都合扱いとした場合には、退職をした従業員から損害賠償請求がされる可能性があります。従業員にとっては、自己都合退職は失業保険給付などの面で不利となってしまうためです。

 

訴訟にまで発展すれば、認定された損害賠償請求を支払う必要が生じるほか、対応に多くの時間を要することでしょう。

 

次ページ“強要”は避けたい…退職勧奨する際の8つのポイント

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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