(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がせっかく優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

寄与分認定における3つのポイント

寄与分に関しては少々複雑なので補足しておきます。寄与分は被相続人の「事業に関する労務の提供」、「財産上の給付」、被相続人の「療養看護等」などにより被相続人の「財産の維持又は増加」について「特別」の寄与をした場合に認められます。

 

ポイントは、「療養看護等」、「財産の維持又は増加」、「特別」の3点になります。BさんはAさんの在宅介護という「療養看護」を続け、Aさんの介護を他人や施設に頼らずに行った結果、Aさんの財産を減らさずに済んだため「財産の維持」があったと認められました。

 

また「特別」については、療養看護の場合には要介護2以上が目安になります。要介護2は、「体に不自由があり、歩行、排泄、入浴時などに他人の手伝いや見守りが必要」な状態で、「5つの問題行動(大声、介護に抵抗、徘徊、外出して戻れない、一人で出たがる)のうち2項目以上に該当」ということが目安になり、このような場合に親族として通常期待される程度を越えた努力(介護)を行えば「特別」と判断される傾向があります。

 

療養看護の寄与の度合い(金額)を判断するのはなかなか難しい問題ですが、介護報酬や家政婦報酬の基準に照らして1日5000~6000円を基準としつつ、職業人ではなく親族であることから20~50%を減じて判断される傾向があります。

 

本件では、5000円×365日×15年間=約2740万円なので、親族であることにより27%を減じられて2000万円と判断されたことになります。

 

15年間の介護の対価としては安いと思われるかもしれませんが、介護の対価というよりも、残された遺産のなかにBさんの影響がどれだけ及んでいるかという意味合いになります。残された遺産が少ない場合にはBさんの影響力も少ないと判断され、さらにC~Fさんの遺留分を侵害しないかどうかという点も配慮される傾向にあります。

 

寄与分の判断については、家庭裁判所調査官による調査が行われるケースが多くなっています。その場合は介護の記録が重要証拠となり、本件ではデイサービスの事業者とBさんが交わしていた交換日誌にBさんの苦労がしっかりと記されていたことが威力を発揮しました。寄与分のことを考えておくならば、介護の痕跡をきちんと残しておく必要があります。

 

 

鈴木 洋平

LTRコンサルティングパートナーズ

理事

 

不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

鈴木 洋平

幻冬舎

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