※画像はイメージです/PIXTA

対象となる会社の同意なしに買収を仕掛ける「敵対的買収」。そもそも敵対的買収を仕掛けられる会社は、どのような会社なのでしょうか。みていきましょう。

敵対的買収を行う目的、デメリット

買収を実施しようとする企業は、敵対的買収により対象となる会社の価値向上を目指しています。ただし対象となる企業の防衛策により失敗しやすい点や、詳細な調査の実施ができない点、反発から人が離れていく可能性がある点に要注意です。

対象会社の経営陣を刷新、目標達成を目指す

株式公開買付が成功し対象会社の株式を50%以上取得できると、株主総会の議決権を行使できます。そのため元の役員の影響を受けることなく、取締役を始めとする役員の選任が可能です。

 

経営陣の入れ替えを実施し効率化を進められれば、対象会社の価値が過小評価されることはなくなるでしょう。企業価値を高めることで、対象会社が持っている本来の価値を正当に評価してもらえる状況を目指せます。

防衛策などにより失敗しやすい

買収された会社の価値向上を目的としていたとしても、対象会社に『防衛策』を講じられてしまう可能性があるのはデメリットです。防衛策を取られてしまえば、買収は失敗しやすくなります。

 

対象企業が防衛策を講じるのは、事前に合意を形成しない敵対的買収の手法が、その目的に疑問を抱かせるためです。「本当の目的は何なのだろうか?」と疑う株主や労働組合から、賛成を得にくくなってしまいます。市場価格より高額な買付価格を提示されれば、買収に賛同してもよさそうなものです。しかし対象会社のほとんどが、疑問を抱き防衛策を取ります。

DDが行えないためリスクがある

対象会社の協力を得られない敵対的買収では、DD(デューデリジェンス)を実施できないデメリットもあります。DDは法律や税務・労務などについて専門家を中心に行う調査です。中小企業が友好的買収を実施するケースであれば、あらかじめそろえた資料を用い1~2日かけてインタビューを実施します。入念に調べ上げたとしても、リスクを完全に回避するのは難しいことです。

 

敵対的買収では、対象会社について詳細を十分に調査できないため、買収できたとしても思わぬリスクが潜んでいるかもしれません。買収に成功しても想定していたほどの利益を得られない可能性もあります。

人が離れていく可能性もある

敵対的買収に成功しても、急な変化や対象企業とのわだかまりが原因で、人が離れていくかもしれません。突然買収の意向を発表され、不意打ちで乗っ取られたという印象を持つ人もいるからです。

 

大勢の従業員が退職してしまえば、買収した事業が立ち行かなくなる恐れがあります。特にキーマンが退職すると「あの人が辞めたなら」と、立て続けに従業員が去っていく可能性が高いでしょう。離れていくのは従業員だけとは限りません。顧客が抱くイメージが悪化すれば、お得意さまがいなくなる事態も考えられます。

敵対的買収の防衛策2例

対象となった会社が買収に抵抗を示すときに実行するのが防衛策です。防衛策の代表例として『ホワイトナイト』と『クラウンジュエル』について見ていきましょう。

想定外のM&Aを防ぐ「ホワイトナイト」

それまで考えてもいなかった敵対的買収の対象となったとき、対象会社が実行するのが『ホワイトナイト』です。対象会社はまず、白馬の騎士のように自社を守ってくれる企業を見つけます。

 

そして敵対的買収の買い手より先に、より高い価格で株式を取得してもらう手法です。敵対的買収を行う会社のもくろみは分かりません。同じように買収されるならば、自社に友好的な企業の傘下に入る方がよいと判断したときに実施します。ホワイトナイトに選ばれるのは、大抵が対象会社より大きく資金力が豊富な企業です。

自社の魅力をあえて下げる「クラウンジュエル」

手に入れたいと思うのは基本的に魅力のあるものです。それは企業の買収でも同様で、魅力がなければそもそも敵対的買収の対象になりません。

 

そこで、あえて自社の魅力を低下させる『クラウンジュエル』という手法もあります。例えば価値のある事業を第三者に売却したり分社化したりして、王冠から宝石を取り除くかのように自社の価値を下げる防衛策です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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