(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業が銀行から融資を受けるには、どうすればよいのでしょうか? 菊地宏氏の著書『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)より、「いますぐできること」を見ていきましょう。かつて銀行員として約1,000社に及ぶ会社の融資に携わってきた筆者が、お金を借りる極意を伝授します。

 

①経営者から会社への貸付金を「資本金」に変える

先ほど説明した債務超過になっている場合、勘定科目を変更するだけでこの状況を改善できる方法があります。それが、経営者個人が会社に貸しているお金を資本金に振り替えることです。純資産の部がマイナスになっていると、すぐに資本金を増やすしか、ここをプラスにすることはできません。

 

そこで経営者からの貸付金を資本金にすれば、日数を要さずにできる上、まとまったお金を改めて用意する必要もないのです。では、実例で見てみましょう。

 

現在の決算書では…(図表2)。

 

出所:菊地宏著『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)
[図表2]①経営者から会社への貸付金を「資本金」に変える:Before 出所:菊地宏著『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)

 

長期借入金500万円のうち300万円は、経営者から会社への貸付金です。今の決算書では、純資産の合計がマイナスとなり、債務超過になっています。

 

そこで、経営者からの貸付を資本金に振り替えると…(図表3)。

 

出所:菊地宏著『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)
[図表3]①経営者から会社への貸付金を「資本金」に変える:After 出所:菊地宏著『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)

 

貸付金だった300万円を資本金に振り替えることで、資本金は1300万円となりました。すると、純資産の合計は150万円のプラスとなります。つまり、経営者からの貸付金を資本金へと勘定科目を変更することで、債務超過を免れることができたのです。

 

このようにすれば、会社の借入金も減りますし、純資産の部がプラスに転じ、良いこと尽くしです。経営者個人が会社にお金を貸していることはよくあることですから、この方法を知っておくと、債務超過に直面した時、危機を脱することができる救いの手になるかもしれません。また、経営者からの貸付金を資本金に振り替えるのは、経営者がOKすれば簡単にできることです。決算書を見て純資産の部が少なくなっていたら、早めにこの方法を行いましょう。

②銀行に業種を変更してもらう

先ほど、格付の中で述べた通り、銀行は同業者との比較において、さまざまな経営指標を比較し、取引先の財務内容の評価をしていきます。

 

ちょっと考えていただきたいのですが、もしある会社が行っている事業の業種が不動産賃貸業なのに、銀行での登録業種が不動産仲介業になっていたら、どうなるでしょうか? 不動産仲介業は、不動産を保有していないケースが多いので、借入金はあっても少額でしょう。しかし不動産賃貸業であれば、ビルを保有している場合も多く、売上高の何倍もの借入金があっても珍しくありません。従って、不動産賃貸業なのに、不動産仲介業に登録されていれば、その会社は異常なほどの借入過多と判断されてしまうのです。

 

 

会社は、設立から年月を経ると、事業も大きく変わってくるものです。多角化に取り組み、複数の事業を行っていることもあるでしょう。ところが銀行は、何を隠そう、取引をスタートした時点で登録した業種のままで会社を判断していることも多く、業種を変更することにあまり頭が回りません。

 

もしかしたら、あなたの会社も銀行は実際の事業とは異なった業種登録のまま、間違った経営指標で判断されている可能性もあります。現時点で一番比率の高い事業と合っているかを確認し、違っていたらすぐに銀行に見直しを求めてみましょう。

 

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※本連載は、菊地宏氏の著書『会社の総資産額は少ないほうがいい』(時事通信社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

会社の総資産額は少ないほうがいい 銀行から融資を受けたかったら、この数字を見直しなさい

会社の総資産額は少ないほうがいい 銀行から融資を受けたかったら、この数字を見直しなさい

菊地 宏

時事通信社

コロナショックを乗り切るために…。 元銀行員が教える、中小企業がお金を借りる極意。 銀行が会社を支援するかどうかの判断基準は、会社の経営者や役員が考えている判断基準とは大きく異なります。「よい会社」というとき…

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