YouTubeのコンテンツづくりにおける大切な工夫
YouTubeのコンテンツづくりで大切なのは、「一本見ればわかる」ものにすることです。YouTubeは初回から順を追って見るものではありません。だから、必要な情報は一本の中につめこんでおく必要があるのです。もちろん私も最初からそんなコツを知っていたわけではなく、今でも失敗しながら学んでいます。
たとえば、魚屋といえばいかつい男性のイメージが根強いため、女性の私が本物の魚屋であることを信用してもらえないことがあります。その対策としてつくったのが、毎回流れるオープニング動画。私には「魚屋の森さんこと森家の長女」、父には「森家の父・社長」と字幕をつけ、さらに父と私、妹のかなちゃんの3人が社名の入った軽トラに乗っているアニメーションも加えました。こうすることで、私が魚屋の跡取りであることが伝わると思ったからです。
それでも父と私が会話する場面を見て、「森さんとこのおじさんは夫婦?」「社長とタメ語で話すのはやめて」といったコメントがつくことも。それ以来、父が登場する場面では「社長(父)」と字幕を入れるなどの工夫もするようになりました。
最近では、YouTubeをあまりチェックしていない父に新しい動画を見せたところ、「ここで言ってる“この前”っていつのこと?」と聞かれました。これは、慣れてきたからこその失敗。少しさかのぼって動画を見直すと、「この前も言ったんですけど」という発言が多いことに気づき、反省しました。継続して見てくれる人を飽きさせず、同時に、初めて見てくれる人も楽しめる……。そんなコンテンツをつくる難しさを、日々実感しています。
情報発信のねらいは私たちのファンになってもらうこと
YouTubeは、多くの人に楽しんでほしいし、「また見たい」と思ってほしい。……と願ってはいますが、人の価値観や好みはさまざまです。どんなに頑張っても、見た人すべてに満足してもらえるコンテンツをつくるのは無理でしょう。
配信を始めた頃は、もちろん再生回数や登録者数が気になったこともありました。
でも続けるうちに、大切なのはリピーターであることに気づきました。発信を受け止め、そのうえでさらに情報を求めるのは、魚屋としての私たちの姿勢に共感してくれた証拠なのかも? と感じたからです。
私たちのYouTubeのテーマは、「魚」。なんとなく目をとめて見はじめたとしても、魚に興味がなければ、多くても数回で離脱するでしょう。見続けるのは、コンテンツの方向性やベースとなっている私たちの価値観を受け入れてくれているからではないでしょうか。
こんな風に思えるようになってからは、登録者数などの数字が気にならなくなりました。本当に伝えたい内容を発信し続けることは、価値観などを共有できる人をすくい上げるフィルターのような役割を果たすのかもしれません。
YouTubeを楽しんでくれる人こそ、私たちのためにアクションを起こしてくれるファン候補です。数字に引きずられて万人受けをねらうのではなく、同じ思いを分かちあえる人に見続けてもらえるものを発信していこう、と気持ちがかたまりました。