(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年11月29日、政府・与党が、富裕層の相続税対策として活用されてきた「タワマン節税」について、タワマンの相続税評価額を引き上げる等の方向で検討を始めたことが明らかになりました。与党の2023年度税制改正大綱に盛り込まれる見込みです。本記事では、タワマン節税のしくみと、何が問題とされているのか、想定される見直しの方向性、および懸念される点について解説します。

タワマン節税の何が問題視されているのか?

タワマン節税が問題視されているのは、主に以下の2点です。

 

1. 税負担に不公平がある

2. 富裕層が相続税対策のためだけに利用するケースがある

 

◆問題点1. 税負担に不公平がある

まず、上述したように、タワマンは建物の評価額が高層階のほうが低層階より相対的に著しく低くなっています。

 

すなわち、高層階は低層階よりも市場価格が著しく高いにもかかわらず、評価額はそれほど高く算出されません。

 

これでは、同じタワマンの低層階の住戸はもちろん、他のマンション、一戸建て等の不動産と比べても著しく不公平ではないかということで、問題視されているのです。

 

◆問題点2. 富裕層が相続税対策のためだけに利用するケースがある

次に、富裕層がもっぱら相続税対策のためだけに利用されている実態があるという指摘がなされています。

 

この点については、2022年4月に最高裁第三小法廷の判決(最判令和4年4月19日 相続税更正処分等取消請求事件)が下されています。

 

事案の概要は以下の通りです。

 

【事案の概要】

(1)被相続人(X)が亡くなる前に約10億円の借入をし、8億3.700万円のタワマンAと約5億5,000万円のタワマンBを購入した(総額13億8,700万円)

 

(2)相続開始から約9カ月後、相続人(Y)はタワマンAを5億1,500万円で売却した

 

(3)その後、相続人(Y)は相続税の納税申告において、税法上の評価方式を用い、タワマンAを約2億4万円、タワマンBを約1億3,366万円と評価したうえ(総額約3億3,370万円)、そこから被相続人(X)の借入金額約10億円を差し引き、相続税を0円として申告した

 

 

これに対し、国税庁は不動産鑑定による実勢価格で評価し直し、タワマンAを約7.5億円、タワマンBを約5.2億円と評価して税額を計算し、相続人(Y)に対し約3億円の追徴課税の更正処分を行いました。

 

相続人(Y)は、この処分を不服として訴訟を提起したのです。

 

この裁判は最高裁まで争われ、最高裁は、結論として、国税庁の処分を有効とし、相続人(Y)敗訴の判決を下しました。理由は、以下の事情から、「相続税の租税回避」の意図があからさまに認められたからというものです。

 

・信託銀行が作成した稟議書に「相続税対策として不動産を購入するための資金」との記載があった

 

・被相続人(X)はタワマンA購入時すでに90歳と高齢であり、相続税対策以外に考えられない

 

・相続人(Y)が相続開始後、相続税の納税申告前に、マンションAを購入時の価格とそれほど変わらない額で売却した

 

すなわち、不動産の税法上の評価額が低いことをことさらに利用して、多額の借金をしてまで相続税対策を行ったことと、相続開始直後に物件が売却されたことをとらえ、もっぱら相続税逃れのために行われたと認定されたのです。

 

前述のように、不動産の相続税評価額が低く抑えられている理由は、不動産が通常、居住の場、事業を行う場等として利用されるものです。税負担を重くすべきでないと考えられているからです。

 

最高裁の判例は、もっぱら相続税対策のためだけに利用することは、上記趣旨を逸脱する行為であり、許容できないという考え方に立脚しています。

 

もちろん、上記趣旨は、相続税対策と必ずしも矛盾するものではありません。したがって、タワマン節税のすべてがNGとされたわけではありません。あくまでも、相続税を回避することだけを目的とした行為は、法の趣旨を没却するので、認められないということです。

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